東京車日記いっそこのままクルマれたい!
第94回 TOYOTA SUPRA RZ/トヨタ スープラ RZ
『湾岸ミッドナイト』に国産チューンド伝説再び⁉ 新型スープラで、終わりのないドラマを手に入れる。
17年ぶりに復活したトヨタ スープラ。BMWとの協業とはいえ、国産スポーツカーの大いなる遺産が新型になって復活したのは最高すぎるよね。首都高湾岸線、80スープラで最高速チャレンジとか1990年代の夢……。スープラは国産チューンド最強の時代を彩る一台だった。
新型は2019年版スープラを主張するエクステリアで武装し、大人のロードスターとしてほぼ完璧にスタイリングされた兄弟車、BMW Z4とは棲むべき世界がまるで違っている。エンジンとシャーシ、ホイールベースが一緒だから基本的な特性は一致するものの、ノーマルのスープラはオーナーの好みでいくらでも進化できる伸びしろをもたせた、あくまでもベースモデルという考え方なんだ。視界が狭いフロントガラス、強靭な剛性を誇るボディと、チューンアップされてモンスターマシンに生まれ変わった“その後”も想定しているような好戦的なデザインが、トヨタの企みを感じさせる。
最初、その姿をニュースで見た時は思わず「旧型ザクかよ……」と絶句したものの(笑)、東京の街中で駐車している新型スープラを見ると「これぞ国産チューンドの決定版」と言える、痺れるようなカッコよさに気づかされるんだ。先代の丸みを帯びたボディ形状を引き継ぎつつ、エアロフォルムをくどいほど強調して、H・R・ギーガーのクリーチャーよろしくなまめかしい有機的なキャラクターを創出。デザインというよりモデリングの巧みさで、見る者の目を奪う。
「羊の皮を被った狼」とはかつて国産スポーツカーによく使われていた表現なんだけど、新型スープラは最初から、狼まるだし(笑)。このもはや行き着いた感のあるモデリングを追いかけるように、オーナーはカスタムチューンへと誘われるんだ。
満を持して復活を遂げた、国産チューンドの代名詞。
ノーマルの新型スープラは、ブレーキ性能とBMWの直列6気筒エンジンが突出している他はいたって大人のスポーツカーで、ステアリングはフラット、足まわりは安定性を確保しつつ固すぎない平均的なスポーツカーのそれ。参考にしたというポルシェの718 ケイマンの影響を感じさせるというよりは、慎み深いウェットな排気音や2シータークーペのサイズ感が英国スポーツ的だね。情緒があって音量は控えめ。ノーマルとスポーツモードの運動性能の差も、目が覚めるほどの大きな違いはない。そもそも素性がいいからエンジン系、排気系、足まわり系のどこから手を入れていくにしても破綻なく、自分の理想の一台に近づけていくことができる仕様なんだな。自分がオーナーだったら、まずマフラーと足まわりに手を入れたくなるね。
そもそも湾岸系なら3ℓ直列6気筒モデルを選ぶべきだとは思うけど、峠仕様なら2ℓ直列4気筒ターボが楽しそう。ノーズは軽いし、先代より短いホイールベース、高いボディ剛性といった新型のメリットを大いに享受できるはず。こういうカスタムチューンを前提にノーマルの新型スープラをあれこれ考えだすと、その楽しさに国産スポーツがパッとしなかった失われた10年間が恨めしいよ。本家トヨタのチューニングブランド、GRが気を吐くのは当然として、社外の日本のチューナーやカスタムブランドがどこまで新型スープラの波に乗れるのか。スープラが日本のスポーツカーカルチャーを盛り上げる起爆剤となりえるかは、ひとえにそこにかかっている。
余談だけどインテリアのインフォテインメントパネルやスイッチ類は、ご存じの通りBMWと同じなのね。ウインカーレバーは左にあるし、うっかりBMWに乗っている気分にもなるんだけど(笑)、新型スープラは紛れもない国産スポーツカーであり、ステアリングを握るたびに誇らしさで胸がいっぱいになるんだ。それは利用できるものはなんでも利用する、バックヤードビルダー的な感覚で捉え直すと完全に成功したプロダクトだから。それでいて基本ポテンシャルが高くて、オーナーの選択肢が多く自由度が高い、国産スポーツの美点を新型スープラが体現しているからに他ならない。
「さぁ、キミならどうする?」って、クルマが語りかけてくるし、乗りながらにして理想の一台を追い求める、そんな永遠の現在進行形のカーライフが始まるわけ。
●エンジン形式:直列6気筒DOHCツインターボ
●排気量:2997㏄
●最高出力:340PS/5000rpm
●駆動方式:FR(フロントエンジン後輪駆動)
●車両価格:¥7,027,778(税込)
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