Vol.23 PK22

  • 文:佐藤早苗
  • 編集:山田泰巨
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Vol.23
Vol.23 PK22
PK22

ポール・ケアホルム

文:佐藤早苗 編集:山田泰巨

木製チェアの名作が次々に生まれていた1950年代のデンマークにおいて、スチールの可能性にいち早く着目していたポール・ケアホルム。彼の仕事を象徴するのが「PK22」です。モダンなデザインの中にもデンマークのクラフトマンシップが感じられ、どこから見ても完璧な美しさは空間に心地よい緊張感を与えます。

スチールの脚部にシート状の座面が載ったチェアは、軽やかな存在感が魅力的。このチェアはミース・ファン・デル・ローエのバルセロナチェアからの影響を強く受けているといわれています。サイズはW630×D630×H710×SH350mm

「大切なことは、自分の個性ではなく、素材の個性を表現すること」

そのように語ったポール・ケアホルムは完璧主義者としてもよく知られます。無駄を削ぎ落とし、手仕事の温かみとインダストリアルデザインを両立させた数々の家具は、どの角度から見ても美しいのが特徴です。家具職人として学んだ後にハンス J. ウェグナーのもとに勤め、ウェグナーにも才能を高く評価されたケアホルムは、勤務と並行して通ったコペンハーゲンの美術工芸学校の卒業制作で原型となる「PK25」を製作しました。改良を重ね、1956年に生まれた「PK22」は構造そのものがデザインの美しさに繋がる名作です。翌年には、権威あるミラノ・トリエンナーレのグランプリを受賞し、ケアホルムの名は世界的なものとなります。ストイックとも言えるシャープな見た目に反して、レザーが柔らかく身体を包み込む優しい座り心地。使い込むほどに、身体に馴染んでゆきます。

ケアホルムが1980年に51歳の若さで亡くなるまで協業したのがアイヴィン・コル・クリステンセンです。カール・ハンセンの営業マンとしてウェグナーを世界的デザイナーにした彼は、その後ケアホルムの家具の生産に注力しました。ケアホルム亡き後は、フリッツ・ハンセンが製造と販売を引き継ぎ、現在に至ります。時を経ても色褪せないタイムレスなデザイン、そこにはケアホルムの美意識が凝縮されています。

バックスタイルもご覧の通りの静謐な佇まい。どの角度から見ても美しい、隙のないデザインはポール・ケアホルムならでは。上品なグレージュのレザーは2019年末まで販売される期間限定モデルです。

レザー、キャンバスに加えて選べるのが、籐編みのシート。ナチュラルなラタンを使いながら、端正な表情でコンテンポラリーな空間にも美しく溶け込むデザインです。