男なら真似してみたい、セルジュ・ゲンスブールの官能的な着崩しスタイル
文:小暮昌弘(LOST & FOUND) 写真:宇田川 淳 スタイリング:井藤成一第4回 バグッタの白シャツ
セルジュ・ゲンスブール、その名前を聞いただけで“官能”を感じると言う人もいるほど、彼はデカダンでダンディなフランス人です。1928年4月2日、パリ20区に生まれ、本名はリュシアン・ギンスブルグ。ピアノ弾きだった父の影響で、幼少期からクラシック音楽に親しみ、50年代にはパリの有名なキャバレーでピアニストとして働き始め、ボリス・ヴィアンに出逢った頃からセルジュ・ゲンスブールと名乗るようになりました。その後、歌手としてもデビューし、フランス・ギャルのために書いた『夢見るシャンソン人形』が世界的なヒットとなり、その後はフランスの音楽界を牽引し、さらには映画監督、俳優としても活躍したマルチなアーティストです。
多くの女優や女性と浮名を流しますが、60年代から英国の女優、ジェーン・バーキンと事実婚の関係に。バーキンは、バッグの名前になるほど洒落た人でしたが、ゲンスブールもまたスタイルが独特で、特にその着崩し方は他の人ではとても真似できないものでした。気取りがなく、無造作に装っても、色気が全身から発散しているようなスタイル。まさに“官能”そのものです。
今回は、そんなゲンスブールが愛したスタイルを紹介しましょう。
「レノマ」のTシャツ、「リーバイス」のジーンズ、そして「レペット」のダンスシューズ。これらがセルジュ・ゲンスブールが愛用した定番のアイテムですが、もうひとつ忘れてはいけないものがあります。それがインナー。ゲンスブールのインナーは、白シャツかデニムシャツに決まっていました。そして、大胆にボタンを3つくらい開け、胸を見せてしまうのがゲンスブール流です。まさにセクシーな伊達男。
単に無造作に着ているように見えますが、彼なりに計算していた可能性があります。実は、無精髭の長さにもゲンスブールは気を使っていたそうです。『セルジュ・ゲンスブールとの一週間』(立川直樹著 リトル・モア刊)では「(シェーバーメーカーの)ブラウンに特別につくらせたんだ。2ミリだけヒゲが残るようにってね……」とシェーバーに関する言及をしています。案外、シャツそのものにも、ボタンの開け方にも、彼なりのこだわりがあったのかもしれません。
イタリアのシャツメーカー「バグッタ」のものは、そんなゲンスブールが着ていたシャツを思い起こさせるような見事な出来栄え。ちなみに「バグッタ」の創業は1975年。白シャツは「バグッタ」の代名詞と言われるアイテムで、イタリアらしいサルトリアテイストを得意とするブランドです。襟のデザインはレギュラーカラーで、前立てのないフロントはボタンを開けた時にもシンプルさが際立ちます。繊細さが感じられるロイヤルオックスで、このようなエレガントなシャツにわざと穿き込んだジーンズを合わせることこそ、ゲンスブールのスタイルと言えます。
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