Vol.7 ダイヤモンドチェア

  • 文:竹内優介(Laboratoryy)
  • 編集:山田泰巨
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Vol.7
Vol.7 ダイヤモンドチェア
ダイヤモンドチェア

ハリー・ベルトイア

文:竹内優介(Laboratoryy) 編集:山田泰巨

「この椅子は主に空気によってできている」

この椅子をデザインしたハリー・ベルトイアは、自作をそう評しています。空気をはらんだ、あるいは空間に溶け込むような透明なデザインは、彫刻家である彼の哲学を見事に表現したものです。

座面・背もたれ・肘掛が一体となり、有機的曲面を描くシェルは優しく身体を受け止めてくれます。椅子の形を借りた現代彫刻作品といえるでしょう。サイズはW850×D750×H750×SH460mm

15歳のときにイタリアからアメリカへと渡ったハリー・ベルトイアは高校で金属加工を学び、その優れた技術で奨学生としてクランブルック・アカデミー・オブ・アートへ進みます。やがて教員として同校に留まったベルトイアは休業状態にあった金属工房を再開し、ジュエリーや金工の指導を行うようになります。

しかし1943年、同校で知り合ったイームズ夫妻の依頼により、成形合板やワイヤーを用いた椅子の開発に協力することとなりカリフォルニアへ移住。重要な役割を果たしますが、わずか2年余りでイームズオフィスから離れています。続く47年、すでに高名な建築家やデザイナーを起用してアメリカの近代デザインを推し進めていたノル社はベルトイアを招聘し、工場の一部をアトリエとして与えました。ここでベルトイアは持ち前の金属加工の技術を駆使し、2次元的である硬質なワイヤーを3次元の優美な曲線を持つシェルへと変容させたダイアモンドチェアをデザインします。ミッドセンチュリーのモダンデザインを代表する作品となったこの椅子を含むワイヤーチェアコレクションは商業的に成功を収め、ベルトイア自身は以降、彫刻家としての活動に専念するようになります。

個性的で強い存在感をもっていながらも、空間を透過させるデザインは圧迫感がほとんどないため、狭小な空間であったとしても楽しむことができます。あらゆる角度から鑑賞しても美しいダイアモンドチェアは、実用品を芸術の域へと押し上げたと椅子のひとつと言えるでしょう。単に座るための家具としてだけでなく、彫刻として飾るのにこれほど適した椅子は他にありません。

多数用意されたカラー展開からセレクトできるシートパッドは、単体での購入も可能なので、色違いで使って気分を変えてみるのもお薦めです。屋外使用も可能なのも嬉しい。

よりゆったりとしたポジションで寛ぐことができるラージダイアモンドアームチェア。その他にアームのないサイドチェアやバースツールなども展開しています。ラージダイアモンドアームチェアのサイズはW1140×D820×H710×SH410mm