Vol.40 オマージュにオマージュを重ねて、ホンマタカシが撮った夜の銀座通り。

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    写真・文:中島佑介(POST)

    Vol.40 オマージュにオマージュを重ねて、ホンマタカシが撮った夜の銀座通り。

    “Every Building on the Ginza Street” / Takashi Homma / POST
    『エブリー・ビルディング・オン・ザ・ギンザ・ストリート』/ ホンマタカシ写真 / ポスト刊

    アメリカの現代美術作家エド・ルシェは、1960年代に表現の場として積極的に本を活用しました。総数16冊の作品群は、アーティストブックの先駆的存在として、後世の作家たちに大きな影響を与えています。

    ルシェの代表作と言える一冊が、ハリウッドの街路、サンセット・ストリップの両脇に立つ建物をすべて撮影してつなぎ合わせた、1966年発表の『Every Building on the Sunset Strip』です。約2.6㎞にもおよぶ街路を撮った数百枚の写真を手作業でつなぎ合わせるという、気の遠くなる工程を経て完成した作品集は、蛇腹式という特徴的な造本で、16冊の中でも特に高く評価されています。

    実はこのルシェの写真集から遡ること12年、1954年に京橋から新橋を結ぶ通称「銀座通り」に立つ建物をすべて記録した写真集『アルバム・銀座八丁』が刊行されていました。これは記録用として制作されたものですが、テーマや写真のレイアウト、製本方法までが酷似しています。「ルシェはこの本を真似したのではないだろうか?」。写真界ではそんな噂が囁かれましたが、ルシェは明確な回答を示していません。

    2014年からルシェへのオマージュ・シリーズを手がけている写真家のホンマタカシは今年、新作として『Every Building on the Ginza Street』を発表しました。ルシェがヒントにしたかもしれない『アルバム・銀座八丁』の撮影地である銀座通りを舞台に、ルシェへのオマージュを制作するという、さまざまな要素が絡み合ったこの作品。本作で明確に異なるのは、夜景を撮影している点です。

    夜の街で際立ってライトアップされているのは、銀座通りに昔からある建造物ではなく、国際的な大企業ばかり。今日の世相が、間接的に表れています。オマージュであり、かつ独創的なこの写真集は、ホンマが過去の自著のタイトルにも用いた『換骨奪胎』を示す一冊です。


    Ginza Sony Parkで開催中の『TOKYO ART BOOK FAIR: Ginza Edition』では、本作の展覧会『ホンマタカシ "Every Building on the Ginza Street" 』が3月31日まで開催中。詳しくはこちらからどうぞ。

    ホンマタカシ『Every Building on the Ginza Street』。デザインはルシェの『Every Building on the Sunset Strip』を踏襲。

    銀座通り1丁目から8丁目までの街路沿いを記録したホンマタカシの作品は、夜、撮影することで、ライトアップされた建物が特に目を引く結果に。

    上がルシェの作品、下が『アルバム・銀座八丁』。建物の記録方法、レイアウトや造本が似ています。

    “Every Building on the Ginza Street” / Takashi Homma / POST
    『エブリー・ビルディング・オン・ザ・ギンザ・ストリート』/ ホンマタカシ写真 / ポスト刊
    タイトル:『エブリー・ビルディング・オン・ザ・ギンザ・ストリート』
    写真:ホンマタカシ
    出版社:ポスト
    ページ数:54ページ
    サイズ:18×14 cm
    出版年:2019年
    価格:¥5,184(税込)