写真:宇田川 淳
Vol.16 アートなヌメ革シューズで名声を得た、「エンダースキーマ」の進化が止まらない。
「エンダースキーマ」を知る人は、ここで今季の最新アイテムをチェック。知らない人は、こんな個性派ブランドが日本にあることをぜひ覚えていってください!
まず最初にお届けするのは、有名スニーカーに捧げる「オマージュライン」の2017年春夏の新作(上写真)。このラインは、シーズンごとに新作が一足加わります。素材は生成りのヌメ革で、幾つもの異なる風合いのレザーがパーツごとに使い分けられています。迫力と静寂とが同居する造形は、あたかも木彫りでつくられた彫刻のごとし。スニーカー好きの人には、ベースのモデルが何かすぐお分かりでしょう。ストリートスタイルを愛するファッショニスタの足元に欠かせない、定番のアレです。
オマージュラインは、工業製品であるスニーカーの中から、広く世に知られるアイコニックなモデルを選び、真逆の製法といえる手仕事で仕立てることをコンセプトにしたシリーズ。シルエットやディテールが同じでも、素材や製法により別の存在感が生まれています。また、ヌメ革は日光の紫外線などを浴びて濃い茶色に変化し、古い時代の革靴であるかのようにエイジングします。近代的なデザインなのにビンテージ、スニーカーなのに革靴、実用の道具なのにオブジェという、複雑なストーリーを内包しているのです。革靴の製法ですから、ゴム製のヒール交換はもちろん、レザー製のオールソールのリペアも可能。長く履くことを前提につくられているあたりにも、同ブランドのスピリットが見て取れるでしょう。
次ページで、「エンダースキーマ」の別ラインや、「sacai(サカイ)」とのコラボ、東京の直営店などに迫ります。
「エンダースキーマ」は2010年秋冬に柏崎亮がスタートさせた小規模なブランドながら国内外で展開し、シューズの手入れ用品までオリジナルで手掛けています。「レザーインソール」は土踏まずからヒール周辺までを盛り上げ、クッション性と安定性を確保。「デリケートクリーム」はレザーに栄養を与える乳化性で、ツヤのないヌメ革の質感を保つ用途もあります。「レザーローション」は汚れを落とし、同時に栄養を与えレザーのひび割れなどを防ぎます。
「エンダースキーマ」が商品展開の中心にしているのが、オリジナルデザインのシューズ。上の写真は、サンダルとドレスシューズが融合した優雅なフォルムの一足です。パンツの裾を被せればフォーマルな印象になりますから、社内でのリラックス用シューズとしても活用できるでしょう。ちょっと贅沢かもしれませんが。
「オマージュライン」より、初となる丸染め(製品染め)モデル「drum dye」が全5型新登場します。黒に近いネイビーと赤が用意され、2017年3月18日(土)より東京の「ドーバー ストリート マーケット ギンザ」でのみ取り扱われます。
パリコレ参加中のデザイナーズブランド「sacai」とのコラボレーションは、この春夏で3シーズンめ。積み重ねられたアウトソールのモダンなグラフィックに、「エンダースキーマ」らしさが感じられます。
雑貨、ステーショナリー、バッグまで広がる同ブランドのコレクションが一堂に会する待望の直営店が、2016年7月に誕生しました。工場だった建物を活用し、倉庫のような無機質な空間を出現させています。早い時間帯は営業していないので、訪れるときはよくお確かめください。
スキマ
東京都渋谷区恵比寿2-17-20 長谷川ビル
営業:14時~20時
TEL:03-6447-7448
ブランド名の由来は、心理学用語の「Gender Schema」、「ジェンダー・スキーマ=ジェンダー(性)論」から来ています。スポーツスニーカーを模したり、長く使えるモノづくりをしたり、男心をくすぐる要素が満載ですが、従来型の男性的なレザーグッズとは一線を画すニュートラルなアイテムも数多く手掛けています。海外での販売も増え、日本発信の次世代レザーブランドとして、どのような広がりを見せてくれるか期待が膨らみます。(高橋一史)