#26小林和人さんと選ぶ、クリスマスの贈り物。
12月に入って街が慌ただしくなると、今年のプレゼントはなににしようかと思い巡らせる人も多いのでは? 大切な贈り物だからこそ、ていねいに選びたい。どこにでもある店ではなく、信頼できる店主が選んだものを、雰囲気のいい空間で、その魅力を聞きながら買う。そんな時に思い浮かぶのが、小林和人さんの店です。今回はいまの季節にぴったりのギフトを代々木上原に移転した「ラウンダバウト」で選んでもらいました。
吉祥寺の名店として17年もの間親しまれた「ラウンダバウト」がビルの建て替えにより、新天地に引っ越したのは今年4月。新しい店は駅からほど近く、閑静な住宅街のマンションの半地下にあります。元キャバレーを改装した吉祥寺店ほどアンダーグラウンドな雰囲気はないものの、小さな入口からは想像できない奥行きのある店内、建物の一角に巣くうような店の佇まいはそのまま。荒々しくも凛としたコンクリートの空間に、実用的で昔ながらの道具の良さを持ったものたちが並びます。日用品中心の品揃えは基本的には以前と変わらないものの、新しく取り扱い始めたアイテムもちらほら並びます。
「これ、どうやって開けると思います?」
おもむろに小林さんが手に取ったのは、最近扱い始めたというカナダ・トロント発「YNOT」のメッセンジャーパック。通常のようにバックルサイドを押すのではなく、強力なマグネットにより開閉できるようになっています。旅行にも対応できる大容量で、背面にはノートPCが入れられるスリーブ付き。生地はコーデュラナイロンと経年変化を楽しめるワックスキャンバスの2種類で 、しっかりした上質なつくり。小林さんは主に出張や旅行用として使い、宿に着いたらパッカブルのデイパックに変え、街に繰り出すそう。デイパックは値段も手頃で、プレゼントに良いのではと、和やかによどみなく語る小林さん。
次にオススメしてくれたのは、帽子職人・坂口直顕さんがつくる「saravah」のハット。小林さんが被っているベレーも「saravah」のもので、やわらかく馴染んだ風合いが気持ち良さそうです。店に置いてあるのは、小林さんの眼を通して選び、多くは実際に使っているもの。しかも、店にいれば、つくり手のことから使い心地まで、直接聞けるのも醍醐味です。
体温が感じられる、少し前の機能的な道具が並ぶ店に。
次に女性に向けたプレゼントを選んでもらいました。まずは、ラウンダバウトでポップ・アップ・ストアも行っている「クロイゼ」のバッグ。シンプルでやさしい丸みを帯びた形がユニセックスな雰囲気で、色合いによって印象が随分変わります。続いて、ヴィンテージの輪転機で印刷したスウェーデンの壁紙を使った、ロゼポムンダルのノート。いろいろな柄がある中、小林さんはジャクソン・ポロックのようなプリントが店に合うとセレクト。シックでノスタルジックなノートは新年から始める日記帳にもぴったりです。
小林さんが「ラウンダバウト」に選ぶのは、機能的でありながら、どこか手仕事の味が残されたプロダクト。「最先端の機能ではなくて、ちょっと前の機能なんです。人の手を掛ける部分が大きい工業製品など、機械と人が協働していて、体温の感じられるものに魅かれます」。日用品がつくられた初期の時代の純粋さをはらんでいるようなもの。実用的なアイテムが、相反するくすんだダークトーンの店内に並べられることで、古い外国映画のような独特の風景が立ち上がります。
「店主がもっている独特さが染み出ている店が好き」と言う小林さん。ラウンダバウトはまさにそんな店で、店名の“環状交差点”という意味の通り、オープンで人とモノとのつながりを大切にする小林さんのまわりに集まってきたものの反映のようです。移転してからは、ご近所のレストラン「LIFE 」と組んで、イベントを開催するなど、街に開いて行く活動もしていきたいとのこと。これから代々木上原を拠点にどんなカルチャーが生み出されるか、楽しみです。
「ラウンダバウト」で買い物をするということは、店の雰囲気も含めて丸ごと買うという体験なのだと思います。時間と手間を掛けてモノを選ぶというのは、いまや贅沢な買い物の仕方ですが、大切な贈り物こそ、そうしたプロセスも楽しみ、心を込めて選びたいですね。
Roundabout
東京都渋谷区上原3-7-12 B1
TEL:03-6407-8892
営業時間:12時~20時
定休日:火曜
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