アナログ機器で、ハイレゾを超える豊かな高音質を
このテクニクスのレコードプレーヤーの通常モデルSL-1200Gは初秋に発売だが、その前に限定モデルSL-1200GAEを4月に予約開始したところ、受け付け開始と同時に注文が殺到。国内販売分300台が、わずか30分後には完売した。デジタル、配信、ストリーミング時代にアナログレコードが予想外に人気を博しているとマスコミ的にも話題だが、その象徴が本プレーヤーだ。テクニクスが一昨年、高級オーディオを復活させたところ、全世界から「それならプレーヤーも復活させてほしい」との要望が殺到。特に伝説の名機として、世界で累計約350万台を売り上げ、2010年に生産終了したSL-1200の再登場を望む声は強かった。
外見はレトロだが、中味は最新鋭。技術者のこだわりが深く投入されている。テクニクスのレコードプレーヤーといえば、ベルトやプーリーを経由しないで、モーター軸が直接、ターンテーブルを回す「ダイレクトドライブ」が代名詞だ。かつてのSL-1200やSL-10などは、このテクノロジーが光っていた。しかし、いつしか「オーディオにはダイレクトドライブは向かない」という悪評が立ち、同技術が他社には難しかったこともあり、従来のベルトドライブが主流に。いま、高級レコードプレーヤーは、ほとんどがモーターの回転をベルトや糸で伝える間接駆動方式だ。
しかし、テクニクスはレーゾンデートルに徹底的にこだわった。ダイレクトドライブは決して間違いではなく、過去のダイレクトドライブには欠点があったことが問題だった。「コギング」と呼ばれる一定間隔の回転ムラが音を汚していたのだ。これを追放できれば、ダイレクトドライブの汚名も追放できる。最新技術の粋を集めて「コアレス・ダイレクトドライブモーター」を開発、さらに、回転ムラを検知したらセンサーが回転位置を検出し、直ちに負荷変動に応じた最適補正を行う高精度なサーボメカニズムも整備。これは、ブルーレイディスク(BD)プレーヤー部隊に異動していたオーディオ技術者が、BDプレーヤーの要素技術として考案したアイデアを活かしたのである。撤退後も技術者を温存し、来るべき開発の日に備えていたのだ。
音質は、まさに伝統的なアナログサウンドと現代のハイレゾ音調の融合だ。これほど解像度の高いレコードプレーヤーはほかにないと思わせる。繊細さから力感までの音表現の幅広さ、音の開放感、上質感……など、アナログレコードがもつ音楽的情報量を最大限に引き出した音だ。アナログは、優れてハイレゾだと知る。このプレーヤーは、オーディオの新しい価値だ。
トーンアームは、水平回転軸と垂直回転軸を単一中心点で交差させるジンバル方式。テクニクス伝統の技。