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デザインとラボの両輪から、
柔軟な建築が生まれる。
建築家は建物の形をつくるもの。でも最近ではその領域がどんどん広がっている。ツバメアーキテクツはそんな「建築以外」のことも手がける建築家集団のひとつ。「デザイン」と「ラボ」の2つの部門があり、前者は形のあるものを、後者はリサーチや街づくりなど、形のないものに関わる仕事だ。「建築家はもともと、空間構成とそれによって人々をどうつなげていくのかという社会構築の両方を手がけていたわけです。その2つをそれぞれ職能として分離させたら、仕事のバリエーションが増えました」と彼らは言う。
そのきっかけが、多世代シェアハウス「荻窪家族プロジェクト」だった。利用者らとワークショップを行い、太極拳教室ができる鏡張りの集会室、居住者のためのシェアワインバーなど、充実した共有部がつくられた。 「阿蘇草原情報館」では、大きな軒下や100㎡近くある受付の空間が、利用者が自由に使い途を考えることができる〝広場〞になる。
彼らはプロジェクトを進める時、図面にさまざまな言葉を書き込んだダイヤグラムを使っている。その言葉が「シェアライブラリー」「福祉の専門家」など、具体的で固有名詞も多いのが特徴だ。これは彼らが複数のプロジェクトを経験するうちに、「社会的な問題は中心ではなく、端のほうで起きる」ということに気づいたからだという。「僕たちが対話する相手は年代も職業もさまざまだし、要望も個別的です。そのどれもが面白いので取りこぼさないようにするために、ダイヤグラムではそのまま書くようにしています。その個別的なことが日本全国で起きていて、別のところでも応用できる」
こうして出来上がった彼らの建築は、「これでなければダメ、という固定的な建築ではない」という。「フレキシブルな建築を目指しています。といってもなんでもできるように広くてユニバーサルな空間をつくるということではなく、人が寄りつく取っかかりをつくっておいて自由に使いこなせるものをつくりたい。たとえばテーブルなら四角いほうが使いやすいけれど、緩やかにカーブするテーブルを置くと場所に流動性が生まれて、多様な使い方を想像できるようになる」。最近では敷地や空間をどう使えばいいか、用途の組み合わせ方から依頼されることも多いという。ユーザーを楽しく巻き込みながら、建築の新しい可能性を生み出している。
自然博物館と環境NPOのオフィスがある「阿蘇草原情報館」。ツバメアーキテクツが提案した受付の大空間には、椅子やテーブルのあるラウンジ的な設えに。
©Kenta Hasegawa
上に跳ね上げる窓、蔀戸(しとみど)がある「蔀戸の家」。蔀戸を開けると内部に軒下のような居場所が生まれ、風景を中に引き込んで内外をつなぐ。
©Kenta Hasegawa