鮮やかに 進化を遂げた、有機EL第2弾。

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    青野 豊・写真photographs by Yutaka Aono

    鮮やかに 進化を遂げた、有機EL第2弾。

    黒い部分の階調も細かく再現できるのが、第2世代の有機ELならでは。実勢価格65型¥970,000

    いまテレビといえば液晶だが、欠点も多い。バックライト光が漏れて黒が浮く、動画応答が遅く、早い動きの被写体がぼける、視野角が狭く斜めから見ると変色する……。この欠点は、バックライトの光をカラーフィルターで透過するという方式に起因している。20世紀のテレビはブラウン管だった。大きく、重たい、消費電力も多いデバイスだが、「自発光」が画質的なポイントで、コントラストが高く、動画もぼけず、視野角もどこから見ても問題なかった。それが液晶になって失われた。 

    有機化合物に電圧をかけ、自発光する有機ELは、まさに「新しいブラウン管」。ディスプレイはディレクターズ・インテンションを再現しなければならない、と私は常々言っている。つまり制作者の「思い」を映像で表現しなければならない。この部分は暗部に沈める、この部分は明るくするという、コンテンツ制作時での絵づくりの意図をそのまま再現できる唯一のディスプレイが「自発光・有機EL」なのだ。既に日本では昨年から韓国のLGエレクトロニクスが有機ELテレビを発売しているが、ここに紹介するのは、その第2世代版。いま世界的に有機ELが量産できるのは、韓国のパネル・メーカーのLGディスプレイが唯一だ。

    第2世代は、第1世代有機ELパネルに比べ、性能を格段に上げた。ドルビービジョンというHDR(ハイ・ダイナミックレンジ)方式に対応するため、輝度を大胆に向上。HDRは、黒と白の間のレンジを拡張することで、これまでの規格では見られなかった明部の色を豊穣に再現することを可能にした技術だが、実現するためには高輝度が表示できなければならない。ところが、極端に明るくはできないという問題があった。「自分を燃やす」自発光では、輝度を上げると寿命が短くなり、寿命を延ばそうとすると、輝度を落とさなければならないからだ。 

    パネルの材料と構造を根本的に変革することで、その問題を見事に解決。従来の約1・5倍の白輝度を実現し、さらに寿命を延ばすことに成功した。輝度半減期の時間は10万時間を確保。HDRは液晶テレビでもトレンドだが、暗い背景に明るい被写体がある(たとえば、闇夜に満月)図柄では、ハロー現象という輪郭にじみが発生する。画素単位で自発光する有機ELでは、それは皆無。実にすっきりと切れ味のよい鮮鋭感が得られるのである。コントラストの高さ、精細さ、ヌケのよさという画質的な美点をさらに高め、HDRという新映像にも的確に対応した新世代・有機ELテレビへの期待は大きい。

    量産が非常に難しいとされる有機ELだが、LGディスプレイのみが、それに成功、商品化している。

    麻倉怜士
    デジタルメディア評論家。1950年生まれ。デジタルシーン全般の動向を常に見据え、巧みな感性評価にファンも多い。近著に『高音質保証!麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)『パナソニックの3D大戦略』(日経BP)がある。
    ※Pen本誌より転載