地域の魅力を再発見することを目的に、小誌Penと三重県がタッグを組んだ「オール三重プロジェクト」。そこで出会った伝統を紡ぐつくり手と、事業者の垣根を超えて誕生した新しい名品を2月13日(土)にインスタグラムでリアルタイム配信が決定。三重の魅力を知り尽くしたエキスパートたちと編集部による公開トークは必見だ。
伊勢神宮創設の顛末が記された「日本書紀」巻第六では、美しく満ち足りた土地であることから可怜(うまし)国とも称えられる伊勢国(いせのくに)。その大部分を占める三重県は、雄大な自然や伊勢神宮をはじめとする豊かな観光資源に恵まれ、さらには海山の幸やブランド牛など、美食の宝庫として知られている。一方、そんな“美(うま)し国”で育まれてきた、匠の技を現代に伝える工芸品に、各地で出合えるのも三重県の魅力だ。
たとえば、県北部に位置する四日市市の萬古(ばんこ)焼。陶土に熱に強い鉱石(ペタライト)を混ぜる特殊な技法を特徴とする萬古焼の土鍋は、実に80%以上もの全国シェアを誇る。その窯元のひとつである銀峯陶器では、三代目の熊本哲弥さんが、職人の手仕事の温もりを残しながらも生産工程をオートメーション化する革新的なシステムを導入。
「今後はより食や暮らしに寄り添った商品の提案をしていきたい」と、近年は独自ブランドの調理器具や食器類の製造・販売にも挑戦する。同じく四日市市で、代々にわたり木桶での醤油づくりを行うのが伊勢蔵だ。「長いもので100年以上使い続ける木桶で仕込むことで、唯一無二の味になるんです」と話す5代目の式井一博さん。伝統的な醤油や味噌の他、ドレッシングの開発なども行っている。
中勢に位置する津市には、明治41年創業の「おぼろタオル」がある。社名にもなっている“おぼろ染め”とは、乾いた状態ではおぼろげに、水に濡れるとくっきりと模様が浮かぶ染色技法のこと。創業者で日本画家でもあった森田庄三郎が発明したものだ。同社では全国的にも珍しい一貫生産にこだわりながら、現代のニーズに合わせた製品開発に取り組んでいる。
そして南東部の伊勢市には、国内外の数々のビアカップで最高賞に輝き、伊勢神宮お膝元の餅屋から世界へと飛躍したクラフトビールメーカーの伊勢角屋麦酒がある。さらに南下した尾鷲市では、古くから山林で働く山師(木こり)たちが愛用してきた尾鷲わっぱの伝統を、4代目ぬし熊・世古効史さんがたったひとりで守っている。
「100年前のわっぱも修理するし、自分の代からはいろいろな漆器を創作するようになった」と話す世古さんもまた、伝統だけでなく革新の気風を感じさせる現代の名工だ。
ほかにも伊賀くみひもや松阪木綿、伊勢うどんから北牟婁郡のみかんまで、三重県を代表する地場生産者たちが一堂に会したのが、今回の「オール三重プロジェクト」。次のページで紹介する、異業種交流やワークショップを通じて生まれた特別なコラボレーション製品は、1月23日より三重県伊勢市の人気ショップ「衣」にて発売がスタート。恵み豊かな土地で生まれた、新しい名品は必見だ。
事業者共同開発によって誕生した、三重の新しい名品たち。
銀峯陶器×TARDの「鍋と鍋敷き」
コットンライフ×衣の「松阪木綿バッグ」
おぼろタオル×平治煎餅本店の「平治煎餅用風呂敷」
ユニオン真珠×衣の「ベビーパールネックレス」(小)
ユニオン真珠×松島組紐店×衣の「パールネックレス」(大)
松島組紐店×衣の「マスクホルダー」(右)
ぬし熊×衣の「尾鷲わっぱ 夫婦茶碗」
二軒茶屋餅角屋本店×各治の「伊勢角屋麦酒とビアマグ」
三重県が誇る、伝統・地場産業をリードする20社がここに集結!
山々の連なりが美しい鈴鹿山脈に抱かれ、雄大な伊勢湾に臨む三重県。前半のページで紹介した歴史ある産業を担うつくり手の他にも、数多くの魅力的な伝統産業と地場産業の担い手たちがいる。今回のプロジェクトは、県全域から選りすぐった20の事業者が集結し、ジャンルの垣根を超えたコラボレーション。その中から豊な食生活を支える山海の恵みとして、三重県産の桑名もち小麦や特産松阪牛のビーフオイル、鳥羽市答志島産のめかぶを使った味付けめかぶ、さらにはこんにゃくや干物など、三重の美味なる品々を厳選。県を代表する事業者とその看板商品がここに集結し、2月13日(土)に「オール三重プロジェクト」として、東京日本橋の三重テラスよりインスタグラムにてリアルタイム配信が決定。三重の伝統産業の魅力を伝え、今回誕生したコラボアイテムを紹介する。
<Companies & Signboard Products List>
桑名市 ①保田商店「おもちパスタ」
四日市市 ② 銀峯陶器「花三島(Ginpo 三島)」 ③各治「喫茶去(きっさこ)」 ④ 伊勢蔵「伊勢蔵醤油 響」と「赤だし味噌」
亀山市 ⑤山忠食品工業「味付けめかぶ」
伊賀市 ⑥ 松島組紐店「伊賀くみひも」
津市 ⑦おぼろタオル「専身タオル」 ⑧ 平治煎餅本店「平治煎餅」
松阪市 ⑨コットンライフ「松阪もめん手織り反物 松坂嶋」 ⑩上野屋「こんにゃく香肌麺」
多気郡 ⑪松本畜産「ビーフオイル」 ⑫元坂酒造「酒屋八兵衛 純米酒」
伊勢市 ⑬二軒茶屋餅角屋本店「伊勢角屋麦酒 PALE ALE」 ⑭みなみ製麺「伊勢うどん」 ⑮ユニオン真珠「真珠」 ⑯ 衣「松阪木綿 トートバッグ」
度会郡 ⑰TARD「オリジナル下駄」 ⑱山藤「焼き串ひもの」
北牟婁郡 ⑲堀内農園「みかん」
尾鷲市 ⑳ぬし熊「尾鷲わっぱの刷毛塗り 丸型弁当箱」
三重の魅力を伝える目利きとして、全国の伝統および地場産業と深く関わり、独自の商品開発を手がけるビームス ジャパン・ディレクター鈴木修司氏、昨年『在宅楽飯100 15分で最高のおうちごはん』(大和書房)を上梓し、インスタグラムで多くの支持を集める料理家のウエキトシヒロ氏がトークイベントに参加。今回取り上げた三重の新しい名品の誕生秘話や、ウエキ氏による三重産品を使ったアレンジレシピの公開を予定している。また今回の取材を通して出合った、「ヒト・モノ・コト」についても目利きたちがざっくばらんに語り合う内容だ。ぺン公式アカウント(@penmagazine)とウエキトシヒロ氏のアカウント(@utosh)の2つのインスタグラムを繋ぎ、“美し国”の魅力をリアルタイムで発信するため、ぜひともご視聴をお薦めしたい。