藤原ヒロシ率いるFRAGMENT DESIGNとブルガリのコラボレーションによる初のメンズアクセサリーが発表された。コレクション発表から間もない10月初頭、ブルガリ銀座タワーで話を聞いた。
日本を代表するクリエーター、藤原ヒロシ。音楽プロデューサー、DJ、大学教授など多彩な顔をもつ人物である。90年代の裏原ブームから現在まで、話題となったプロジェクトは数知れず。近年はポケモン、スターバックス、ナイキ、モンクレール、ルイ・ヴィトンなどとコラボレーションし、縦横無尽にヒットを飛ばしている。ブルガリとのプロジェクトは今回で3回目と蜜月にあるようだ。しかも今回は待望のメンズのコレクション。これまでよりも藤原らしさを感じさせるラインアップを一つひとつ確かめながら、様々なプロジェクトを成功させる彼の‟コラボ思考”について話を聞いた。
コロナ禍のなか、今回のプロジェクトはオンラインで進行した。
2019年に展開されたコラボレーション「BVLGARI × FRGMT」。3回目となるカプセルコレクションは初のメンズアクセサリー コレクションとして「FRAGMENT × BVLGARI」とその名を一新、11月18日(水)に発売される。過去2回は蛇の頭をモチーフとしたブルガリのウィメンズバッグ「セルペンティ」がアイコニックだったが、今回はメンズのバッグ&アクセサリーにフォーカス。さらにブルガリ初となる腕時計でのコラボレーションもお披露目となる。スマートなブリーフケースやトートなどのバッグも登場。大きく映えるブルガリ フラグメントのロゴや落ち着いたブラックやブルーの色展開が、藤原さんらしさを感じさせるコレクションに仕上がっている。
今回のコラボレーションが、メンズのコレクションになった理由を聞くと、藤原さんは「自然な流れ」だったと言う。前回のコラボではサコッシュが意外なアイテムだったが、「今回作れて良かったのは、ナイロンのトート。基本的にはレザー素材でというルールがあったのですが、3回目のこの度は、ほかの素材を実現できました」と話す。世界に蔓延する新型コロナウイルスの影響はもちろんあった。「現地に飛べず、すべてリモートでやりとりしてつくりました。サンプルをこちらでつくって送ったもの、送った絵型をブルガリがつくったものがあります。最終的なサンプルチェックができなかったので、今日初めて見るアイテムもあり、サプライズ的な印象ですね」
リモートミーティングのなかで出来上がった今回のコレクション。従来のブルガリのメンズ・レザーグッズは基本的にトラディショナルな紳士に向けたデザインだった。今回はそこに素材やロゴづかい、ジップ、軽快なトートなどでストリート感がプラスされた印象だ。
「ブルガリっぽさは尊重したかったので、既存顧客の方にとり入れてもらえるようなアレンジをしています。ブルガリの中に、僕のエッセンスを加えていく感じです。例えば僕が自転車に乗る時に使うようなバックパックをつくっても意味がありません。そういうのは自分のブランドでやればいい」。あくまで自分がやりたいことを押し通すのではないところが藤原さん流コラボのようだ。
トートバッグにはキャリーケースのハンドルを通すトロリーポケットが付くなど、ジェットセッターな藤原さんらしいディテールが利いている。フロントのジップポケットも藤原さんの発案だ。バッグ内にもついているオープンポケットなど現代を生きる男性のための機能が考えられている。
「シンプルで機能的なデザインが好みです。ナイロン以外にもコットンなど提案した素材はいくつかあったんですが、最終的なジャッジはブルガリに任せています。僕らのようにストリートな人がターゲットというより、ブルガリの顧客に手に取って頂けたらいいですね。世の中のムード的に、かっちりしたものよりちょっとやわらかい、使いやすいものに移行しているとも思うので」
ブルガリでは初となる、腕時計のコラボレーション
今回、瞠目なのがブルガリ初となる腕時計のコラボレーション。1970年代に登場した「ブルガリ・ブルガリ」は、ブランドを代表するアイコンタイムピース。コラボモデルの「FRAGMENT × BVLGARI ブルガリ・ブルガリ 日本限定モデル」は、一目見て両者のコラボレーションとわかるキャッチーなデザインだ。
「今回のコラボを象徴するアイテムだと思います。BVLGARI、FRGMTという文字がベゼルに入り、ストラップはNATO。ブルガリをミリタリーぽくしたらどうなるかと思って。良い具合にブルガリとフラグメントが合わさったと思います。誰が見てもブルガリとわかって、誰が見てもフラグメントぽいと思われるものかなと」
ダイヤルから数字を省き、かなりミニマルな佇まいになった。エレガントとミリタリー感が薫り、不思議な存在感を放つ。
今回と同様、コラボレーションする際は数シーズンにわたるものが多い藤原さん。タッグを組む際は化学反応があるかどうかが重要という。「コラボにおいて、自分がやりたいものが出来上がるのがいいのか、向こうが望んでいるものが出来上がるのがいいのか、という2つの面があると思うんですけど、ブルガリに関しては、先方が望んでいるものに僕のテイストを加えて出来上がるという感じですね。ブランドによっては好き勝手やってくれ、というところもあると思うんですけど、僕にとってはやりづらい。何からやっていいかわからなくなります。『ラグジュアリー』とか『革だけ』とか、ルールを提示してくれる方がやりやすい。コラボにおいてそこまで自我を通さないですから、相手にとってはやりやすいと思います(笑)」
今後のコラボレーションビジネスの行方について聞いてみた。「コラボはなくならないでしょうね。コラボという言葉はあいまいで、どこからどこまでをコラボと定義するかは難しいところがありますが、僕にとって原体験があるんです。80年代にニューヨークへ初めて行った際、現地を象徴する店としてティファニーに行きました。そこにモンブランとロレックスのものが売られていたんです。両者ともティファニーが認める良いアイテムだから扱っているとのことで、ティファニーのブランドネームだけ刻印されていました。この、“餅は餅屋”的な考えがカッコいいと思ったんです」
「この体験は繋がっていて、その後、僕がグッドイナフを始めたときに、バッグを吉田カバンに頼んでみたんです。そしたら受けてくださいました。バッグ工場はたくさんあるので自分たちでもつくれるんですけど、吉田カバンという素晴らしいバッグ屋に頼みたかったんです。こんな風に“餅は餅屋”的なかたちでコラボレーションビジネスも発展していくのではないでしょうか」
コラボレーション先のことを考え、またユーザー目線も失わない藤原さん。クリエイティブでありつつも自分のエゴは押し付けない。そのバランス感覚が数多のコラボレーションを成功させる秘訣だろうか。今回のブルガリとのコラボレーションはカジュアルでラグジュアリー。デイリーユースしたくなる逸品ぞろいだ。11月18日(水)の発売を前に、現在ブルガリLINEアカウントで予約受付を開始している。また11月11日(水)より伊勢丹新宿店本館1階ザ・ステージのポップアップストアで先行発売も予定。時代を牽引するクリエーターのものづくりに触れてみてはいかがだろうか。長く使えるラグジュアリーなクオリティに、愛着がわくこと間違いないだろう。
問い合わせ先/ブルガリ ジャパン TEL:03-6362-0100