夏に向け手にする機会も増えるサングラス。専業ブランドの定番モデルもいいが、旬のファッションブランドが手がけるものにもぜひご注目を。独自のデザインでいまの空気や勢いを表現する5ブランドから、今夏の一本を探してほしい。
ファッション業界の先端で新たなトレンドを生み出すラグジュアリー&デザイナーズブランドは、アイウエアにもエッジィな感性を注ぎ込む。この実用的なアクセサリーひとつにも、時代の気分が凝縮されているのだ。夏に向け新作サングラスが続々と登場する中で、注目すべき5ブランドを紹介する。やや派手に思えるかもしれないが、軽装になる夏ならば、凝ったデザインのほうが装いを洒落たものに見せてくれる。各ブランド渾身のスタイルを、ぜひ日常に取り入れてみよう。
マイキータ+メゾンマルジェラは、超軽量なステンレスフレームが魅力。
アイウエアのつくりのよさで名高いドイツのマイキータが、前衛的なメゾンマルジェラと組んだコラボブランド「マイキータ+メゾンマルジェラ」。ここに紹介する繊細で知的な印象のフレームは、同コレクションの「エッセンシャル」シリーズの一本だ。ステンレスを打ち抜いた平面的なフレームは、ベルリンの本社兼工場で手作業により製造され、ドイツの工業デザインの伝統とリンクする。ノーズパッドまで同素材で揃えた、洗練のミニマリズムだ。表面は特殊な塗装で独特な風合いに仕上げられている。ブランドロゴを目立たせないメゾンマルジェラのアノニマスなスタイルも踏襲された、さりげなくも主張のあるサングラスだ。
70年代スタイルを、現代的にアップデートするグッチ
ティアドロップタイプの大判レンズが流行したのは1970年代のこと。グッチの服や小物の人気が世界中で花開いた時代でもある。当時のテイストを取り入れた今季の新作アビエイター(パイロット)グラスにも、そのムードが色濃く漂っている。ファッショントレンドとして70年代スタイルが勢いを増すいまこそ、ティアドロップをかけてみてはいかがだろうか。この一本はメタルとセルのコンビタイプで軽快なバランス。さまざまな素材が使われ、複雑な味わいに満ちている。服装は、サファリジャケットやフレアパンツといったヴィンテージ調がやはり相性抜群だ。
象徴的なディテールを、黒にアレンジしたトム フォード アイウエア
大人の色気を表現するアメリカ人ファッションデザイナー、トム・フォードが自身のブランドを始めた時、最初にデザインしたのがアイウエアのコレクションだった。同ブランドにとって重要なこのアクセサリーを製造しているのが、数々のハイブランドを手がけるイタリア・マルコリン社である。互いの協力のもとに生まれたコレクションは、きわめて男性的だ。そのシンボルがヒンジのT字金具である。ここに掲載するのは、これまでシルバーやゴールド色だけだったそのT字が、黒にアレンジされたニューモデル。定番の太めのフレームが新たにマットな輝きを手にして、より幅広い服装に合わせやすく進化した。
新生ボッテガ・ヴェネタの極太フレームで、大胆な装いにチャレンジ
2019年プレフォール・コレクションよりボッテガ・ヴェネタのクリエイティブ・ディレクターに就任したダニエル・リーはブランドのスタイルを、職人技を駆使した繊細な作風から、シンプルで大胆かつモダンな方向に転換した。ストリートのエッセンスも加わり、より多くの人の日常に寄り添うブランドになったといえるだろう。掲載の新作サングラスは、身体のラインを大きく包む今季のビッグサイズのコレクションに馴染むシルエットが特徴。1990年代調のミニマルな服装に合わせれば未来的に、80年代調ならポップに、70年代調ならクラシックにと、着こなししだいで表情が変わる。世界中で人気急上昇中のブランドを手にするいい機会になりそうだ。
品性と遊び心のバランスが巧みなフェンディ
畳んだ状態ではごくシンプルに見えるが、顔にかけると複雑な表情が現れるフェンディのサングラス。その仕掛けはテンプルの巧みな配色と、フラットなレンズにある。スケルトンのテンプルとフロントのメインカラーは同じだが、テンプルの上部にはべっ甲調の、下部には白系の別色が追加されている。さらにレンズは曲面のないフラットタイプで、光を反射する仕上げ。これらの工夫により、見る角度で異なる印象が生まれるのだ。フェンディは服のデザインにおいても、素材や柄を深く追求しているブランド。自然界に思いを馳せた今季コレクションとも、このサングラスは見事に調和する。
アイウエアの選び方には顔の輪郭や体型に応じたセオリーがある。丸顔ならラウンドタイプが、面長ならスクエアタイプが似合うのが一般的。また、大柄な体型には太いフレームが、小柄な体型には華奢なフレームが馴染みやすい。とはいえサングラスは気分が高まる夏のアクセサリーなので、セオリーを気にし過ぎず自由に冒険して選びたいものだ。アイウエアを主役に服装を考えるのも楽しいだろう。今回紹介した5ブランドのサングラスには、それだけの価値がある。