大阪に現れた国内最大級の新店舗、「ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋」を大解剖!

  • 写真:齋藤誠一
  • 文:今野 壘
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大阪・御堂筋にルイ・ヴィトンの新店舗がオープンした。帆船のようなファサードが目を奪うビルには、限定製品や心躍らせるアートピースが揃い、さらにカフェやレストランまで併設。注目すべき「ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋」の中身を一挙に紹介する。

青空とのコントラストが海に浮かぶ帆船を思わせる外装。それが「ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋」の目印だ。製品やサービスの充実度はもちろん、この空間自体も大きな見所のひとつ。

人気ブランドのショップが軒を連ねる、大阪随一のショッピングエリアである御堂筋。そこに現れた、アーティスティックな外装が目を引くビルには、お馴染みのルイ・ヴィトンのロゴが。去る2月1日、注目度が高まる中オープンしたルイ・ヴィトンの新店舗「ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋」だ。地上7階で構成される建物は国内に構えるルイ・ヴィトン ストアの中でも最大級の広さを誇り、他店では味わえないいくつもの感動やサプライズが詰まっている。

歩道に面した1階のショーウィンドウディスプレイには次世代のアートシーンを担う写真家、小林健太が手がけたアートワークが飾られている。その存在感に圧倒され、足を止めて眺める人々も。

アートピースやヴィンテージがそこかしこに! 豪華客船のような店内。

帆をイメージしたファサードは2枚のガラスを組み合わせ、そこにファブリック調のプリントを施した特殊な設計で、店内に優しい光を取り込んでくれる。吹き抜けになった1、2階はその心地よさを実感させてくれる開放感のあるつくりだ。手前左、4脚のチェアとともに置かれたコーヒーテーブルはベルリンのアーティスト、アントン・ストイアノフの作品。天板から覗く、凝った意匠となっている。

内装デザインを手がけたのは、フランスで芸術の発展に貢献したものに与えられるレジオンドヌール勲章シュバリエ級の受勲をはじめ、多方面で絶賛されるアメリカ人建築家のピーター・マリノ。1階から4階はリテールスペース、5階は不定期で催しなどが行われるイベントスペース、最上階の7階にはルイ・ヴィトンの店舗では世界初となるカフェとレストランが併設されている。

店内の什器は特注の1点モノからシャルロット・ペリアンのサイドボードや坂倉準三のチェアなどの貴重なヴィンテージまでさまざまで、フルラインアップが揃う圧巻の商品同様に見どころが満載。

1階は主にウイメンズやファインジュエリー、ウォッチ、フレグランスなどを中心とした展開で、パートナーや家族と一緒に楽しめそうだ。

2階奥にはペインターが常駐していて、パーソナライゼーションの工程を間近に見ることができる。トランクやラゲージが並ぶラックの一部には、タイの作家が手作業でロープを編み込み制作したというインスタレーションも。メゾンのルーツである船を想起させる粋なアプローチだ。
熟練したペインターによる、精緻な筆触が美しい。イニシャルから写真をもとにしたアートペイントまで、細かいオーダーを直接相談できるのも魅力。

ウイメンズのバッグなどのレザーグッズやホーム・コレクション「オブジェ・ノマド」を展開する2階には、ペインティングのデモンストレーションが見られるブースを常設。購入したお気に入りのアイテムを自分だけの仕様にカスタムできるサービスには大人も高揚するはず。

レザーグッズの一部にはホットスタンピングによるイニシャルの刻印も可能だ。オブジェ・ノマドは国内でも実際に見て触れられる店舗が限られているので、同店に足を運んだ際にはぜひお目にかかりたいところ。

3階は、ウイメンズのレディ・トゥ・ウエアを扱うフロア。最新のコレクションピースからシューズまで、品揃えの豊富さは国内屈指だ。

メンズを扱う4階は、同店の中でも最大の売り場面積を誇る。最新の2020年春夏メンズコレクションをはじめ、プレタポルテのほぼすべてのラインアップが揃うため、メンズ アーティスティック・ディレクター ヴァージル・アブローの描く世界観をよりはっきりと感じられる。
奥にはフォーマル・ラインのウエアとシューズが並ぶ、サロンルームが併設されている。ドイツ人作家のグレゴール・ヒルデブラントが大阪港の波をイメージして制作したという大きなアート作品は、よく見るとタイル状のピースから成り、実はそのすべてがアナログレコードをカットしたものだ。

リテールスペースとしては最上階にあたる4階がメンズフロア。木製のランタンや家具の一部は木製家具のパイオニアで、その作品がスミソニアン博物館や東京国立近代美術館にも所蔵されている家具デザイナー、ジョージナカシマのもの。特にランタンは、店舗全体の内装デザインの根本的なインスピレーション源になったという逸品だ。

カンファレンススペース横に飾られた、グラフィティのようなアートピースを手がけたのはNYを拠点とするアーティスト、ディヴィッド・リード。ラグジュアリーメゾンでありながら、ヴァージル・アブローのルーツであるストリートのエッセンスも覗かせている。建築家、青木淳の手がけた外装は水面に浮かぶ船をイメージしたものだが、ピーター・マリノによる内装もまた、そんな青木のアイデアに呼応したもの。さながら豪華客船のようなスペースが、特別なひとときを過ごすにはあつらえ向きといえる。

あえて作家やテイストを統一せずに古今東西の多彩な家具や什器を揃え、ひとつの空間をつくり上げているのが面白い。プライウッド製のチェアは米国のコンテンポラリーアーティスト、ジェフ・ムースによるデザイン。

他では手に入らない、希少な限定アイテム

メゾンの中でも屈指の人気を誇る傑作ボストンバッグをアレンジした「キーポル・バンドリエール 50 フォリアージュ」は、全面に花をあしらったロマンティックなデザイン。2020年春夏メンズコレクションのランウェイでも登場したアイテムで、ショーでは生花だったが製品では造花に変更され、実用性も兼ね備えている。世界的に極少数の展開で、日本での入荷はルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋のみ。¥4,554,000(税込)

やはり気になるのは、国内でもここでしか手に入らないエクスクルーシブなアイテムたち。フラットレンズと特大シェイプが人気のサングラス「デイトン」は、限定カラーの上品なべっ甲柄を採用したセルフレームがポイントだ。もちろん、このモデルのように意図した限定品だけでなく、傑作ボストンバッグをアレンジした「キーポル・バンドリエール 50 フォリアージュ」のように、国内では同店だけに入荷されるプロダクトもあるので、メゾンのファンには小まめなチェックをお勧めしたい。

ボリューム感と直線的なシェイプが目を引く「デイトン」。ブロウラインのエッジや蝶番部分はルイ・ヴィトンの真髄でもあるトランクの金具を模したデザインになっていて、さりげない遊び心が見える。¥93,500(税込)

ブルゾン型のラペルドジャケットとロングジレを組み合わせた下写真のコートは3WAYで、デザイン性の高さと入手の困難さが相まって、オリジナルな着こなしを堪能できることだろう。一方、職人芸の光るウエアにも限定モデルが。オーガンジー素材のセットアップは手刺繍でフラワーをあしらったアーティスティックな1着で、春夏の装いに軽やかさと品格を添えてくれる優れたデザイン。残念ながらパーカはすでに完売しており、パンツも残りわずかという人気ぶりだ。

厚手で肌触りのいい、ウールツイルで仕立てた変形アウター「AF スポーティ 3 in 1コート」。ロングジレとジャケットはそれぞれ単品で着用でき、組み合わせて着ると写真のようになる仕組み。¥737,000(税込)
メンズでは珍しいチュールを3層使いした、透け感のあるフーディ&トラウザーズ。春風に軽やかに揺れる生地に、ポップな配色の花柄刺しゅうが映える。「フラワーエンブロイダードチュールフーディ」(完売)、「フラワーエンブロイダードチュールパンツ」¥803,000(税込)
刺繍は間近で見ると、かなり立体感のある仕上がり。職人のていねいな仕事からは、手作業の温もりとハイセンスさを同時に感じることができる。

ルイ・ヴィトン ストア初となる、カフェに注目。

カフェとレストランの内装はルイ・ヴィトンの建築部門とA.N.D.の小坂竜によるデザイン。カフェではジュースからビールやワイン、シャンパンなどのアルコールまで揃えている。お勧めはスガラボ オリジナルブレンドのフレッシュハーブティ。

海外のルイ・ヴィトン ストアでも類を見ないカフェ&レストランは、東京の紹介制レストラン「スガラボ」を手がける気鋭のフレンチシェフ須賀洋介がディレクション。カフェ「LE CAFE V」はドリンクだけでなくサンドウィッチ、カレー、ハンバーグ、デザートなどフードのアラカルトメニューも充実していて、ショッピング後のリラックスタイムやランチにも最適。

オープン時のメニューリストには奈良県・中井農園のいちごを使ったタルトやカクテルなどをラインアップしている通り、日本各地の厳選食材を使用している。今後も季節によってメニューが変わっていくとのことなので、再訪が楽しみだ。カフェの奥には、唐突に積み上げられたルイ・ヴィトンのトランクが。そこになにが隠されているのかは、ぜひ足を運んで確かめてほしい。

円環状にソファとテーブルがレイアウトされたカフェスペース。大きな3つのアートピースはいずれも日本人アーティスト、松岡亮が手がけたもの。モダンな空間で舌鼓を打つ絶品のフードとドリンクはやはり格別。
カフェには御堂筋を見下ろせるテラス席も設けられている。ターコイズブルーのチェアとテーブルは、船が浮かぶ水に着想を得たもの。

そもそも、1990年代の終わりに、ルイ・ヴィトンがプレタポルテを含む全ラインを取り扱う大型店を日本国内で初めてオープンさせたのが大阪・心斎橋であり、この街とメゾンとの関わりは深い。

かつて“天下の台所”と呼ばれていた大阪では、水運体系が形成され、港湾都市としての色が強まっていった。青木淳はそんな歴史を振り返り、江戸と大阪の物流の要だった菱垣廻船に着想を得て、「ルイ・ヴィトンメゾン 大阪御堂筋」の外装デザインを生み出したと語っている。奇しくも165年前、鉄道と船が主要な輸送手段だった時代に世界初の旅行用鞄の専門店として創業したルイ・ヴィトンのルーツにもどこか重なる。そんなエピソードに思いを馳せ、新たなルイ・ヴィトンストアに足を踏み入れたらきっと、冒険心と好奇心を掻き立てられることだろう。

ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋
大阪府大阪市中央区心斎橋筋2-8-16
TEL:0120-41-6910
営業時間:11時〜20時30分
不定休
www.louisvuitton.com