9月14日、夫である写真家・桑島智輝さんが、妻の女優・安達祐実さんを撮影した写真集『我我』が発売されます。前作の『私生活』以上に生身の日常を切り取った今作について、桑島さんが「最愛の妻であり最高の被写体」という安達さんに、その魅力と撮影の裏側を聞きました。さらにスペシャル企画として、桑島さんが撮影した安達さんのインタビュー動画も併せて掲載します。
2013年に発売された『私生活』の撮影が始まったのは11年のこと。その後、関係を深めたふたりは結婚しますが、その間も桑島さんは安達さんを撮り続け、総数は約8年間で実に35,000枚以上。L版でプリントした写真は無印良品の264枚入りのアルバムに保管され、その数もすでに100冊を超えるといいます。
今回、『我我』に収録されているのは、そのうち、15年11月13日のふたりが結婚した日からお子さんの誕生を経た、約3年間の記録です。そこから選びぬかれた135枚の写真には、安達さんの何が写っているのでしょうか。
カメラを向けられること自体が、日常の一部のようです。
8年間で35,000枚となれば、単純計算で1日約12枚。撮影のタイミングは桑島さんが「あっ」と思った瞬間と、時と場所を選びません。日常生活のなかで不意にカメラを向けられることに対し、安達さんは「気になりません」と言います。
桑島さんも「撮らないでと言われたことはありません。なんというか、私自身が『写真家なんだし、妻を撮るのも当たり前なんだろうな』って思っていますから(笑)」と語ります。
「撮影は、どちらかが棺桶に入るまで(続けたい)」という桑島さんの言葉にも、安達さんは「離婚しない限りは撮って欲しいですね」と笑顔で応えます。彼女にとって、桑島さんからカメラを向けられること自体が日常の一部のようです。
前述のとおり『我我』でフォーカスするのは、結婚した日からお子さん誕生を経た約3年間。『私生活』の時とは、異なる安達さんが写っているのでしょうか。
「家族にとって大きく変動した時期だったので、なんとなく私がどっしりした感じがします。下の子が生まれたことで、もう一段、肝が座ったなって(笑)」
初めての子どもをもった桑島さんに対しては「子育てが及び腰!」や「初心者だからって感じが甘い!」と厳しいダメ出しの一方、「以前は自分が興味のないことには一切無関心だったけど、いまでは子どもの意思を尊重してくれるようになりました」と、だんだん父親になっていく桑島さんを温かい目で見守ります。
夫婦でありカメラマンと被写体という関係性のふたりが創った『我我』には、『私生活』以上に赤裸々で、ドキドキしながらページをめくるような写真が並びます。掲載された135枚の写真の選定に、安達さんは携わったのでしょうか。
「いいえ。なに載せられても構いませんから。私と桑島さんの関係性、しかもこれまでも何万枚も撮ってきて、本になるならこの写真は載せないというのはナンセンスというか、それは違うよねって。また、これは私の写真集というよりも桑島さんの作品集という意識の方が強いから。なんというか、色々とお見苦しいところがあるかもしれませんが、これが私たちってことなんです(笑)」
良いところも悪いところも、ありのままの姿を載せています。
『我我』で見せる安達さんの表情が、なんら着飾っていない素の妻であり母であるのは、桑島さんに絶対的な信頼を置いているからにほかなりません。
「そもそも私、桑島さんの写真が好きなんです。被写体が私じゃなくても、いい写真だなって思います。でも、雑誌などを見ていると『今回はどうしたのかな?』ってことも。聞けば、やはりある事情で満足できる撮影じゃなかったり。私が気づくことで話してもらい、ストレス軽減になればいいなって思っています」
その勘の鋭さは、公私ともにパートナーであるからこそ。桑島さんも「誤魔化しが効かないし、僕が思っていることは大体わかるみたいですね」と苦笑します。
安達さん主導のように見える夫婦関係ですが、その実、桑島さんが安達さんを手の平で遊ばせている側面もあるようです。安達さんが照れながら語ります。
「私をコントロールする術を知っていると言うか、絶対に否定せず肯定してくれる。そこは助かっています。まぁ、否定したら100倍返しですけど(笑)」
そして、桑島さんの〝いい写真〟にジェラシーを感じることもあるのだとか。
「気分が乗って撮影できたんだなってことも誌面から伝わるんですが、そんな時は逆に『なんだよ、私じゃなくてもこんな写真撮れるんじゃん!』って焼きもちを焼くことも(笑)。嬉しいけど妬けるみたいな、複雑な心境ですね」
最後に、安達さんから『我我』をどう見て欲しいのかを、聞いてみました。
「夫婦のカタチってそれぞれだし、その本当のところなんて他人にはわかりませんよね。この写真集には、私たちの、良いところも悪いところも、ありのままの姿を載せています。だから、世の中にはこういう変わった夫婦、家族もいて、それでもちゃんと生きてるんだなってことを見てもらえれば嬉しい、という感じでしょうか(笑)。また、この写真集をご覧になって、『夫婦にしかわからないことがある』というのは、どのご夫婦も分かってもらえるだろうし、少しでも共感してもらえればそれでいいのかなって思います」