コンセプトバイクやスーパーカーをデザインし、そのエクストリームなマシンから着想を得た時計づくりを行ってきた「ベル&ロス」。このユニークな試みの最新作となる「BR レーシングバード」の魅力を、ゼネラルマネジャーのファビアン・ドゥ・ノナンクールに解説してもらいました。
「ベル&ロス」は、高校時代からの親友で時計好きのブルーノ・ベラミッシュとカルロス・ロシロによって、1992年にパリで創業。歴史的には若いブランドですが視認性、機能性、高精度、防水性を基本とするプロフェッショナルなコレクションが、時計通や専門家に高く評価されてきました。なかでも2005年に発表した角形モデルの「BR 01」シリーズは、一世を風靡するほどの大ヒットを記録。さらに14年より、コンセプトバイクやスーパーカーなどをデザインし、そのエクストリームなマシンからインスパイアされた時計づくりを展開。このまったく新しい手法によって生み出されたのが、最新作の「BR レーシングバード」です。
ゼネラルマネジャーのファビアン・ドゥ・ノナンクールは、「このモデルは、アメリカのネバダ州で毎年開催される『リノ・エアレース』で新記録を樹立することを目標とした、最新鋭の飛行機をイメージリソースにしています」と話します。ただし、現実に存在する飛行機ではありません。創業者でクリエイティブ・ディレクターを務めるブルーノ・ベラミッシュが、独自にデザインした飛行機から着想を得た腕時計なのです。
自ら創造したエクストリームなマシンが、個性的な腕時計を生み出す。
時計業界では、スポーツカーやスーパーバイクなどとコラボレーションした特別モデルや限定モデルは珍しくありませんが、ベル&ロスのアプローチはまったく違います。「創業者でクリエイティブ・ディレクターを務めるブルーノ・ベラミッシュが、エクストリームなマシンを独自に創造、つまりデザインすることがすべての始まりとなります。このマシンから、さまざまにインスパイアされた時計づくりを行ってきました。こんなにも面倒な手法で、新作にアプローチするブランドは他にないと思いますね」と、ノナンクールは説明します。
そのイメージリソースとして選ばれるのは、スピードが要求されるマシンだそうです。
「誰もが知っている分野で、独創的で美しいスタイルのマシンを創造し、そこから着想した革新的でハイレベルな腕時計をつくり上げていく。それだけに個性的でオリジナリティが高く、魅力的なコレクションになっていると思います。ベル&ロスはまだ小さなブランドですが、創造性は抜群に高い。それを誇りに感じています」
こうしたベル&ロス特有のアプローチがスタートしたのは、2014年に発表されたパワフルなコンセプトバイク「B-ロケット」。その翌年には戦闘機を想起させるシャープなシルエットを備えたスーパーカー「エアロ GT」、17年には1940年代の戦闘機に搭載されていた燃料タンクをイメージさせるレーシングカー「ベリータンカー」を発表しました。
「デザインだけに留まらず、最初の『B-ロケット』はイギリスのハーレーダビッドソンの正規ディーラーと提携し、実際に1台を製作。アメリカ・ユタ州のボンネビル塩類平原(ソルトフラッツ)で走らせています。それ以外はレギュレーションなど複雑な条件が加わるため、残念ながら実現していません」
ボンネビル塩類平原は、地上最速を競うモータースポーツ「スピードウィーク」で知られており、そもそも「B-ロケット」は、そのためのスピードバイクというコンセプトから誕生しました。いずれにしても机上のアイデアに留まるスケッチレベルではなく、いつでも実機の製作に着手できるほど完成度の高いデザインが追求されてきたということなのです。
ベル&ロスは角形モデルの「BR 01」が象徴するように、常に航空機からインスピレーションを得てきました。そんな同社がバイクやクルマを経て、満を持して初めて手がけた飛行機が「BR バード」になります。アメリカのネバダ州で毎年開催される「リノ・エアレース」で新記録を樹立することを目的に、並外れたパワーを備えているだけでなく、シングルシートのコックピットを後方に配置したユニークなスタイルが印象的です。また前方に設けられた幅広の主翼が、ハイスピードと俊敏な機動性を感じさせます。
「これまでのマシンのように、ベラミッシュがすべてデザインしました。ただし主翼の『&』マークはブランドロゴだけでなく、各業界のプロフェッショナルとの連携や協働も意味しており、彼らからさまざまな知識や情報、意見などを得ている証しでもあるのです」
機体はグラファイト、ファイバーグラス、チタン、アルミニウム合金などハイテク素材を使用。エンジンはイギリスの伝説的な戦闘機「スピットファイア」で航空史に輝く「マーリン」をベースに開発された、12気筒4300馬力の「ロールス・ロイス ファルコン」を搭載。これらによって、プロペラ機の限界速度ギリギリの最高時速909kmが想定されています。エアロダイナミクス(航空力学)を踏まえた、どこまでも現実的なデザインであり設計になっているところがポイントです。
航空機と腕時計、新たなアプローチから誕生した最新コレクション
ベル&ロスが考案した独自の飛行機「BR バード」からインスパイアされたモデルは、クロノグラフとセンター3針の2タイプですが、どちらもスピードと高性能というコンセプトを継承。とりわけ、カラーコードを忠実に反映しています。
クロノグラフの「BR V2-94 レーシングバード」は、ダイヤルのベースカラーが「BR バード」の機体と同じくホワイト。これは太陽光を反射して、熱をもたないようにするという機能的な理由があるそうです。それに対して、アワーマーカーのアラビア数字やタキメーターなどはブルー。これも「BR バード」の尾翼まわりと同じカラーリングですが、「飛行機が飛翔する大空のイメージ」とのこと。加えて航空計器で重要な情報を表すオレンジを、クロノグラフの表示に使用しています。なかでも、エンドに機体のシルエットがあしらわれた秒針は鮮やか。ブルーとホワイトのコントラストによって、清涼で爽快な印象を与えるクロノグラフに仕上がっています。レザーストラップとSSブレスレット仕様の2種類合わせて、世界限定999本というのも魅力です。
センター3針のモデル「BR V1-92 レーシングバード」も、「BR バード」の機体からホワイトとブルーをアレンジ。これはクロノグラフも共通していますが、ダイヤル外周の分・秒を示す目盛りがブルーとグレーが交互する組み合わせになっています。グレーは主翼の「&」マークの配色であり、スピード競技に用いられるチェッカーフラッグもイメージしているそうです。カーフ製のレザーストラップも、ブルーとコバ部分のオレンジでカラーリングされています。
3時位置には3日分の日付表示をレイアウトしており、これも航空計器をイメージ。その指針にはオレンジが配され、アクセントにもなっています。エンドに機体のシルエットがあしらわれた秒針は、ブルーに。時分針本体はグレーですが、中心部がダイヤルと同じホワイトなので、秒針が刻々と進む躍動感を明瞭に視認できます。これも「BR バード」をイメージさせる仕掛けかもしれません。またケース径が38.5mmなので、ユニセックスで使用できる腕時計と言えるのではないでしょうか。こちらもクロノグラフと同様に、世界限定999本の展開です。
ベル&ロスが創造したエアレース機からインスパイアされた、最新作の「BR レーシングバード」――。この新作ローンチイベント「BR バード アドベンチャー」が、7月に東京・東日本橋のマルニ木工ショールーム「マルニ東京」で開催されました。パリ本社を代表して参加したゼネラルマネジャーのノナンクールは、「ベル&ロスは、視認性や機能性に優れたプロフェッショナルのための腕時計をつくってきました。なかでもアビエーション(航空)を主力としており、航空計器をイメージしたコレクションが高い人気となっています。しかし我々は空と陸と海、そのすべてがイマジネーションの対象なのです」と挨拶。さらに次のように語りました。
「我々はインスピレーションをなによりも大切にしており、自分たちの価値観と共通する対象を選んでデザインしてきました。コンセプトバイクに始まり、戦闘機をイメージしたスーパーカー、地上最速を競うレーシングカーを経て、今年はよりハイレベルなチャレンジとなる飛行機そのものに挑戦。デザイン上の創作物ではありますが、このエアレース機からインスピレーションを得ることで、実在する腕時計が生まれたのです」
会場には「BR レーシングバード」の2モデルはもちろん、イメージリソースとなった「BR バード」の映像やモックアップ(模型)、パイロットスーツなどを展示。リノ・エアレースのパイロンを最高時速909kmで飛び抜けていく、スピード感あふれるエアレース機の世界観が表現されていました。
問い合わせ先/オールブルー
TEL:03-5977-7759
www.bellross.com