「時間とは、刻むものではなく流れるもの」。今年4月のミラノ・デザインウィークに初出展したグランドセイコーは、神秘的なインスタレーション「ザ・フロー・オブ・タイム」でその哲学を伝えました。今回の展示を手がけたタクト・プロジェクトの吉泉聡が、その発想の秘密を語ります。
毎年4月に開催されるミラノ・デザインウィークは、家具見本市のミラノ・サローネをはじめとして、世界中から最新のクリエイションが集まる大規模な催しです。今年、このイベントに初出展したグランドセイコーのインスタレーション「ザ・フロー・オブ・タイム」は、「時間の流れ」をテーマとし、多くの人々を魅了しました。その空間を手がけたのが気鋭のデザイナー、吉泉聡が率いるタクト・プロジェクト。彼はグランドセイコーが採用しているセイコー独自のムーブメント、スプリングドライブから大きなインスピレーションを得たと言います。
吉泉聡が手がけたインスタレーション。その発想の原点は?
「グランドセイコー」が誇るセイコー独自のムーブメント、スプリングドライブ。その存在が、多くの人々が我を忘れるほど感じ入った美しいインスタレーション「ザ・フロー・オブ・タイム」の原点でした。舞台となったのは、世界中から最新のクリエイションが集まるミラノ・デザインウィークです。セイコーにとってミラノ初となる今回の出展で起用された、タクト・プロジェクトの吉泉聡はこう語ります。
「音もなくスーッと動いていくグランドセイコーの時計の秒針を見て、時間とは刻むものではなく流れるものだと実感しました。この時期のミラノは誰もがとても忙しいですよね。そんな中、途切れることのない時のうつろいを感じて、いい時間を過ごせたと思える空間をつくりたかったのです」
ザ・フロー・オブ・タイムの会場では、視界を覆うような幅21mものスクリーンに、映像クリエイターの阿部伸吾によるさまざまな光景がルー プするムービーが投影されました。朝日、波、桜、夜景、そして満天の星。こうした一日の時の流れに溶け合うように配置されたのが、スプリングドライブの約200点におよぶ精密なパーツを封入した透明アクリルのオブジェです。「このオブジェは12点あり、パーツが徐々に組み上がる様子を再現。最後の1点は実際にムーブメントが動いています。クラフツマンシップの存在を一連のオブジェで表現しました」と吉泉。近づいて目を凝らすと、気が遠くなるほどに細かいパーツが、小宇宙を形づくっているかのようです。
映像とオブジェが一体となって世界観を語る。
グランドセイコーは、ムーブメントの開発から製造まですべて自社で行う、世界でも数少ない真のマニュファクチュール。スプリングドライブの組み立ては、特に限られた職人にしかできないと言われています。悠久の時の流れは、優れた技術力によって、目に見える時計の針の動きへと変換されていくのです。
「20年以上にわたって機械式時計の革新に取り組み、ようやく完成したのがスプリングドライブだそうです。その結果、秒針のなめらかな動きが実現した。努力を極めた末に本質に到達するという姿勢は日本的ですね」
このインスタレーションに魅了された多くの人々は、ひと時の体験を通して、グランドセイコーの根本にある哲学に触れていたのです。
5月に発売されたヘリテージコレクション「SBGA375」は、スプリングドライブを搭載した最新モデルです。黒に近いミッドナイトブルーのダイヤルの上を、秒針がなめらかに移動していきます。流れる時間の神秘を、世界中の人々に伝えたミラノでのインスタレーション。その出発点になった技術は、これからもこうしてグランドセイコーの製品に活かされ、揺るぎない価値をつくっていくことでしょう。
問い合わせ先/グランドセイコー専用ダイヤル TEL:0120-302-617
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