モノやコトの本質に向き合い表現をするクリエイターと、デザイン性と機能性を追求するザネラートのバッグは、さまざまな部分でシンクロします。そこで、各分野のトップランナーに密着し、“ザネラートがある日常”を観察。そのリアルな魅力に迫ります。
いい仕事の現場に上質なバッグは欠かせません。京都大学在学中に華々しく文壇デビューし、「三島由紀夫の再来」とまで謳われた平野啓一郎さんは、普段持ち歩く荷物が決して多くないタイプ。しかし、バッグがなくても事足りる日もある、でも手ぶら男のどこか間の抜けた雰囲気をよしとしないという、高い美意識をもっています。そんな平野さんがバッグを選ぶ際に重視するのは、持ったときの佇まいや、クリエイションとしての完成度。ザネラートのアイコンでありマスターピースでもある「ポスティーナ」は、平野さんの目にどのように映ったのでしょうか。
きれいめでカジュアルという、自分のスタイルにフィット
京都大学法学部に在学中、弱冠23歳にして純文学の新人文学賞である芥川龍之介賞を受賞。あの三島由紀夫が引き合いに出されるほどの才能や熱い想いを、惜しむことなく注入した作品や批評を発信し続ける平野さんに、「新作の長編小説を脱稿したばかり」というタイミングでお会いすることができました。美しい日本文学を生み出すだけでなく、芸術や政治、思想といった分野においても独自の主張を繰り広げ、強い存在感を発揮する平野さん。個人(Individual)よりも小さな、複数の異なる人格である分人(Dividual)の集合体である「自分」は、状況や相手次第で異なる「自分」になる方がむしろ自然であるという“分人主義”を提唱するなど、現代人の多重人格性をポジティブに評する、深く優しい人間観の持ち主でもあります。
ファッションにも精通しており、カジュアルでありながらも上品で、ベーシックでありながらも個性が光る、そんなスタイルを信条とする平野さん。洒脱なルックを形作っているアイテムは、ほとんどがデザイナーズブランドのものだといいます。しかしこだわっているのはそのレーベルではなく、クリエイションに対しての真摯な姿勢。トップデザイナーならではの世界観や研ぎ澄まされた美意識、なによりプロダクトとしての完成度の高さこそが、平野さんを惹きつける要素なのです。
「話題性を競うようなラグジュアリーブランドの動向には興味がないんです。やっぱりモノが良くないと。あと、あんまりストリートに寄りすぎるのもどうかなと……。このポスティーナは、きれいめなのにカジュアルという雰囲気が、普段の自分のスタイルにとても合っています。精緻なものづくりを続けるイタリアブランドというのもいいですね。機能的であることが絶対条件であるかのような、世の中の趨勢とも合致しています」
バッグというツールに対し、ファッションアイテムとしてのアクセサリー的な役割も求めるという平野さん。だからこそ、デザイン性の高さは欠かすことのできない要素です。
「普段の荷物は多くないので、正直バッグが不要なくらいの日もあるのですが、大人の男が手ぶらだと所在なさげで格好がつきませんから(笑)。ポスティーナのやわらかなシルエットと適度なボリューム感は、男の立ち姿を美しく見せてくれますね。見た目重視でその日のバッグを選ぶことも多いのですが、これなら才色兼備でいうことはありません」
“表裏一体”を実現する、高次元のクリエイション
品があってインテリジェントなのに、ほどよくリラックスしていてカジュアル。そんな印象の「ポスティーナ」なら、どんな場所に連れ出しても平野さんらしいスタイルが維持できます。
「これからの季節に大活躍してくれそうな、明るい色みがいいですね。革製なのにとても軽くてしなやかで、長時間持って歩くのも苦になりません。自分のスタイルに合わせやすいレザーバッグはいくつか持っているのですが、やっぱりバッグ自体が重いと持つのを躊躇してしまいます。軽くて丈夫というのは、重要なポイントだと思います」
以前はクルマを所有していたものの、利用頻度のあまりの低さから手放し、「移動はもっぱら地下鉄かタクシーですね」という平野さん。合理的でスマートなライフスタイルを実践するクリエイターゆえ、バッグという道具の選択にも決して妥協はありません。
「財布やスマートフォン、手帳、キーケースに読みかけの本程度」と、毎日持ち歩く“エッセンシャルズ”は少なめ。しかし時期によっては、原稿執筆のためのノートPCや著書の草稿を出力した紙の束、選考委員を務める文学賞のノミネート作品など、荷物量は大幅に増大するそう。収納力が高くハンドリングもいいポスティーナは、豊富で荷物を整理整頓しやすく、きわめて合理的な選択肢といえそうです。
1950年代のイタリアで、郵便局員が実際に使用していたバッグがベースとなっている「ポスティーナ」。プロダクトの背景にあるストーリーや合理性、実用から生まれた高度なデザイン性に惹かれる平野さんは、イタリア郵政省から正式な認可を得たモデルであるというエピソードを知り、「なるほど、だからポスティーナという名前なんですね」と見事に腑に落ちた様子です。ボディと同素材のストラップが付属し、コンパクトに見えてノートPCもらくらく収納可能。リッチで繊細に見えてタフで頑強という“表裏一体”を実現するモノづくりが、ザネラートの真骨頂なのです。
より深く多彩に、革新し続ける創造力を知る。
フラップ正面にあしらわれた2つのターンロック、サイドのスタッズといった「ポスティーナ」の象徴的メタルパーツが、すべてボディと同色となっているのが、「プーラ」素材の最大の特徴。これによりデザインはよりミニマルに、落ち着いた印象に仕上がっています。従来のタンニング(なめし)工程は重金属を使用するところ、金属を一切使用しないため約20%の軽量化も同時に実現。革本来の風合いと美しい色み、うっとりするような肌触り、強力な耐傷性、鼻孔をくすぐるタルク香など、多彩なメリットを享受できる、文字通りの「名品」です。化学物質を一切使用しないエクスクルーシブなナチュラルタンニング製法だからこそ、このプレミアムでリッチな質感、鮮やかな発色が実現したといいます。
しっとりとしたマットな質感のフルグレインレザーは、革本来の魅力を再認識させてくれるもの。この「プーラ」素材は、デザイナー兼CEOであるフランコ・ザネラート自らが長年にわたる試行錯誤の末、ようやく開発にたどり着いたエクスクルーシブなものです。地球環境や製造に携わる職人に一切の悪影響を及ぼさない、新開発のナチュラルタンニング製法によるものであり、2017年にファッションブランドとして世界で初めてエコテックス(スイス・チューリヒに本拠を置く、繊維や皮革製品に関する有害物質の検査認証機関)のレザー規格認証を取得。これは、ザネラートによるレザー革命といっても過言ではありません。プーラのタンニングでは、食品業界で不要となったヒマワリやアーモンド、大豆などを由来とする成分を再利用しています。ロータスフラワーの紋様は、まさに自然との共生を象徴するものなのです。
ザネラートの魅力は、なにも「ポスティーナ」に代表される美しく機能的なバッグだけではありません。サイズやデザイン、機能違いで豊富にラインアップされる、スモールレザーグッズもお薦めです。ブランドの代表的なモチーフである波柄の「ブランディーン」を型押しで表現したシリーズは、堅牢なブルハイドレザーを使用しつつもシルクのようなしっとりとした光沢をたたえ、触り心地も実になめらか。長年にわたって飽きることなく、徐々に深みを増していく経年変化を含めて愛用できること間違いなしです。
古きよき伝統と革新的な技術やアイデアを融合し、たゆまぬ努力でバッグとレザーの未来を切り拓き続けるザネラート。“クリエイション”と呼ぶにふさわしいそのモノづくりのフィロソフィーは、さまざまなプロダクトとして結晶化し、平野さんのような一流クリエイターの美学とも共鳴します。歴史ある「ポスティーナ」に最先端のナチュラルタンニングレザー「プーラ」を載せたクラシカルモダンな名品こそ、その典型といえるものでしょう。
問い合わせ先/アマン TEL:03-6805-0527
http://www.zanellato.com
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