腕時計ブランド「TRUME」に各界の識者が迫る連載企画。第8回はアクメファニチャーのディレクター田中健一郎さんが、経年変化を軸に語ってくれました。
TRUME(トゥルーム)は、エプソンが立ち上げた新コンセプトウオッチのブランド。さまざまなセンサーを搭載しながらも、その表現をすべてアナログの針で行うという大胆な発想で注目を集めています。そのセカンドモデルが今回新たに登場。海をテーマとした本モデルを、長年ヴィンテージ家具のバイイングに関わってきた田中健一郎さんに使ってもらい、そのインプレッションを語ってもらいました。
つくり手の強い意志と、 自信が見える腕時計。
古きよきアメリカでごく普通に使われてきた家具のもつテイストを、日本のインテリア界に根付かせた立役者としてアクメファニチャーは知られています。その活動はアメリカのヴィンテージ家具を発掘・再評価することから始まり、現在ではオリジナルとヴィンテージ双方を扱っています。ディレクターの田中健一郎氏のキャリアはヴィンテージ家具をアメリカで買い付け、自らの手でメンテナンスを施し再生させることから始まり、現在ではオリジナル家具の企画も手がけます。仕事を通じ常に意識していることは゛人とものが積み重ねていく時間について“だといいます。
1ページめで、味のある家具の上に並べたヴィンテージアイテムとともにある腕時計。それがエプソンの新コンセプトウオッチ、TRUME(トゥルーム)です。1942年の創業以来、エプソンは腕時計を製造し続けてきました。アナログ腕時計とはこうあるべきだと語りかけてくるようなタイムレスなデザイン。極めて腕時計らしい面構えですが、小さなケースの中にはエプソンが時計の開発・製造と並行して培ってきた独創的なセンシング技術が結集しています。高精度GPSセンサー、気圧・高度センサー、方位センサーが高密度に実装され、計測値は文字板のアナログ針だけを使って表示されます。この高度に電子化されたメカトロニクスはライトチャージ(光充電)なので電池交換は不要。外観からは識別できませんが、文字板裏側にはソーラーパネルを装備し、室内光の明るさでも充電することが可能です。
「これだけ多くの機能を搭載していることを意識させない、アナログがもつ温もりが伝わってくるデザインですね。つくり手の強い意志と、自信にあふれた表情が見えてくる気がします」と田中氏はTRUMEの印象を語ります。
共通するのは、世代を超えて使ってほしいという思い。
「レザーバンドの風合いが、よりアナログ感を高めてくれていいですね。これはオイルドレザーですか?」革の繊維にたっぷりと油分を含浸させた、ホーウイーン社製クロムエクセルレザーバンドに田中氏の感性が敏感に反応しました。期せずしてアクメファニチャーのオリジナルソファにもオイルドレザーが採用されています。その意図は、愛着をもって使い続けることで現れてくる経年変化を楽しんでほしいからだといいます。
「ヴィンテージ家具には、世代を超えて使ってほしいというつくり手の思いが込められているのを感じます。私たちのオリジナルプロダクトも、将来のヴィンテージ家具になることを願ってつくっています。安直にエイジング加工を施すのではなく、人が使い、時間を積むことで魅力ある表情をもつ家具に育つような素材選びを追求していきたいですね」
アクメファニチャーの基本方針は、TRUMEのMコレクションが掲げるテーマ〝時を刻み、時に磨かれる〞と呼応します。腕時計と家具では製品の属性は異なりますが、アナログ感や経年変化に対するものづくりの姿勢には一脈通じるものがあります。「業界内で非効率だと驚かれるほど素材選びにはこだわっています。そうしてアナログ感を大事にしながら、機能的な部分では抽斗の内部加重を考慮してスライドを採用するなど、ハイテク要素も盛り込んでいます。だからTRUMEには共感する部分が多いですね」
調度品や生活必需品の枠を超え、人生のストーリーを紡ぎ出してくれます。そんな家具のように、身に着けた人のさまざまな瞬間をアクティブにつなぎ続け、時を重ねていく頼もしい相棒。それがTRUMEです。