1941年にニューヨークで創業した「コーチ」と、80年代にニューヨークで活躍したアーティストのキース・ヘリングによるコラボレーションが誕生しました。また、生まれ変わったブランドのアイコン「シグネチャー」が登場。そんなクリエイティビティあふれる最新コレクションを、俳優の緒形敦さんが身に纏いました。
「コーチ」の頭文字“C”がグラフィカルに配された「シグネチャー」が、2018年春のコレクションから新たに生まれ変わりました。これは1970年代に活躍した初代デザイナー、ボニー・カシンのヴィンテージなテイストの意匠に、モダナイズした“C”のグラフィックを配した、これからのブランドの世界観を表現したものです。また今回のコレクションでは、クリエイティブ・ディレクターを務めるスチュアート・ヴィヴァースが敬愛するキース・ヘリングのアートをデザインに取り入れた、モダンなダウンタウンスタイルを提案しています。ニューヨークをともに象徴する両者の出合いによって生み出された刺激的なワードローブ――。その競演に触発されて、今回カメラの前で“コーチ・ガイ”を演じたのは、テレビドラマ『陸王』で俳優デビューを果たして話題となった緒形敦さんです。中学卒業と同時にアメリカへ留学し、10代という多感な時期に、アートやカルチャー、ファッションなどリアルタイムのニューヨークを体感してきた緒形さんに、コーチの最新コレクションを身に纏ってもらいました。
自由なカルチャーミックスの根底にある、ゆるぎないヘリテージ
幼少時代から絵や音楽が好きで、ファッションデザイナーを夢見たこともあるという緒形敦さん。アメリカの高校へ留学し、卒業時には俳優の道とアート系大学への進学という人生の選択に悩んだ末、祖父や父、母の背中を追う決意を胸に帰国したそうです。
「キース・ヘリングも大好きで、自宅には彼の作品集を飾っています。高校時代はボストンの寮で暮らしていましたが、ルームメイトがニューヨークのハーレム出身で、長い休みの間は彼の実家で寝泊まりしていました。ヘリングはストリートアートの先駆者として知られていますが、ニューヨークは文字通り街中にアートがあふれていて、常にアートとともに生活している感覚がありました」と語る緒形さん。ニューヨークの街にあふれるアートや音楽、ファッションといった最先端のカルチャーに触れ、“表現する”というクリエイティブな行為に惹かれていきました。
「ニューヨークで生活している時は常にカメラを持ち歩き、目にしたものを撮影しては、フォトショップを使って自作の絵と組み合わせた作品にしていました。その時々に思っていたことを色やカタチで表現しながらポップなアート作品にしていくのですが、当然音楽も重要なインスピレーションとなります。そうやって表現のカタチや方法にとらわれずに、自分が好きな要素を自由にコラージュしていくような感覚が、このコーチの最新コレクションにもあふれていてとても共感できますね」
一度袖を通しただけで、アメリカンカルチャーの断片を切り貼りするような、クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァース独自のクリエイションを、感覚的に読み取った緒形さん。表現の本質を見つめる曇りのない眼差しには、ジャンルの垣根は存在しないのかもしれません。
最初に着用したスーベニア ヴァーシティ ジャケットを手に取って、「古着っぽい要素と1980年代のアートを融合させながら、ここまでモダンな印象に仕上げているのは本当にすごいですよね」と緒形さん。キース・ヘリングといえばビビッドな色彩のグラフィティを想像しがちだが、今回のコレクションではあえて落ち着いた配色に再解釈されており、あくまでウエアラブルな大人のワードローブが表現されています。
「和柄のようなモチーフとヘリングのポップアートが両方刺繍で表現されていますが、このようにまったく異なる要素を融合させている感覚が面白いですよね。意外と合うんだと、正直驚きました」
今回のコレクションで特に目を惹いたのが、生まれ変わったコーチのシグネチャーパターンにヘリングのアートを配することで、ニューヨークが誇る2大アイコンを融合させたデザインです。緒形さんが着用したジャケットやTシャツ、バッグのボディにも数多く表現されていました。
「特にこのショルダーバッグは、ワッペンやボトルキャップ、ハーネスといったいろんな要素が自由にミックスされていますが、しっかりとブランドのヘリテージを根底に据えているからこそ、表現がブレずに、味わい深いデザインとして成立しているんだと思います」
英国人デザイナーが描く、アメリカンブランドのあるべき姿。
アメリカ留学時代はヒップホップファッションに傾倒していたという緒形さん。20歳を超えて大人になるにつれ、仕立てのよいモードスタイルの魅力にも目覚めたそうです。
「今回着用した服は、どれもアメリカのクラシックなメンズウエアがベースになっていて、非常に面白いです。このキース・ヘリングのアートを配したスエードジャケットは、まるで1970年代の古着みたいですし、合わせたシャツもボウリングシャツですよね。こうやってアメリカのクラシックな要素を現代的に表現することで、また新しい魅力が生まれるのだと感心しました」
ブランドのシグネチャーパターンを取り入れたデザインや、アメリカンクラシックを現代的に再解釈したスタイルに触れ、緒形さんは表現の核となるヘリテージの重要性を感じ取ったようです。
「アメリカでの生活が長くなるにつれ、自分のルーツである日本文化への意識が強くなりました。現地で暮らすいろんな人種や、今回のコーチのコレクションを見ても、僕たちはもっと日本文化の素晴らしさを世界に向けて発信すべきだと感じました。僕は将来的に、アートやファッション、音楽、演技をフュージョンさせながら、日本の魅力を世界に伝えられるような新しい表現に挑戦したいと思っています。ハードルは高いですが、必ず実現したい大きな目標のひとつです」
クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァースは、アメリカに憧れて少年時代を過ごしたイギリス人だからこそ、アメリカを代表するブランドとしての、コーチのあるべき姿を明確に提示できるのかもしれません。ウエスタンやハワイアン、ポップアートといったアイコニックなカルチャーを、年代や属性にとらわれず巧みにミックスしていく彼のクリエイションは、これまでにない新しいアメリカンスタイルをキャッチーに描き出しています。そんな表現を自国の日本文化で挑戦していきたいと願う緒形さんの眼差しは、既に世界を見据えているようです。
ブランドの出自と伝統を継承し、進化し続けるレザープロダクト
ボルドーのMA-1ジャケットを中心に、アースカラーのアイテムでまとめたスタイリング。インナーには、キース・ヘリングのポートレートがプリントされたTシャツを合わせてストリート感をキープしつつも、落ち着いた配色とすっきりとしたシルエットのアイテムで、シックな大人のモードスタイルを表現しました。緒形さんがティーンエイジャーの頃に愛用していた、ヒップホップ風のバギーパンツやバスケットシューズは、それぞれセンタークリース入りのパンツとスエードブーツにアップグレード。さらに“グラブタンレザー”を用いたショルダーバッグが、全体の印象をソリッドに引き締めています。
今季もコレクションの名脇役を務めたのが、ブランドのヘリテージを感じさせるレザーバッグとレザーシューズです。なかでもオールブラックのグラブタンレザーにシルバーのメタルパーツを組み合わせたアイテムは、シャープでエレガントな男性像を描き出しました。デザインモチーフとして取り入れられたディテールは、レザー製のハーネスとメタルリング。グラブタンレザーの光沢感ともあいまって、マスキュリンな色気が漂います。コレクション全体にちりばめられたポップアートやストリートのテイストは、このラグジュアリーなレザーアイテムによって引き締められています。
コーチのロゴマークにあしらわれているモチーフは、ブランド名の由来でもある4輪馬車。今季のレザーバッグやシューズに取り入れられたハーネスのディテールは、もともと馬車に使われていた馬具からインスパイアされたものです。コーチは2013年にスチュアート・ヴィヴァースをクリエイティブ・ディレクターとして迎えて以来、レディ・トゥ・ウエアのフルコレクションを新たにローンチするなど、革新的なクリエイションを追求してきました。しかしどんなに時代が移り変わろうとも、コーチのモノづくりの根底にあるのは、変わることのない自らのヘリテージなのです。
コーチ 2018年春コレクション
問い合わせ先/コーチ・カスタマーサービス・ジャパン
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