HPのデザイン部門最高責任者が語る、プレミアムPCという新たな潮流。

  • 写真:星 武志
  • 文:高野智宏
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ノートPCに“美しさ”という概念をもたらした日本HPのSpectre(スペクトル)シリーズ。Pen Onlineでも過去2回にわたって紹介したSpectreシリーズが、さらなる進化を遂げました。そこで10年ぶりに来日した、HPのグローバルデザインを指揮するステイシー・ウルフさんと、写真家でデジタル機器にも詳しい桐島ローランドさんに、この新Spectreのデザインと魅力について語り合ってもらいました。

今回リニューアルされた「HP Spectre 13」(左)と「HP Spectre x360」(右)を前に微笑む、HPのグローバルデザインチームを率いるステイシー・ウルフさん。手がけた製品がレッドドット・デザイン賞やiFデザイン賞を受賞するなど、輝かしい経歴を誇るデザインマイスターだ。

日本で「HP Spectre x360」初代モデルがデビューしたのは、2015年の秋。アルミニウム削り出しのシャープなフォルムに、ダークトーンのボディと側面にはカッパー(銅色)を配した上質感あふれるデザイン、360度可動する特殊ヒンジによる多彩な使用モードなど、ノートPCの新たな魅力を感じさせました。また17年春には、初代モデルのデザイン的な特徴を踏襲しつつも、さらにその性能と携帯性に磨きをかけ4Kディスプレイモデルやアクティブペン付きモデルを発表。ベゼル(ディスプレイの額縁)幅を極限まで削ぎ落とすことで、ボディ全体をよりコンパクトにして軽量化を図るなど大きな進化を遂げました。そして16年春にデビューした「HP Spectre 13」は、業界随一の薄型化を実現した意欲作。ダークグレーのボディにブロンズゴールドのリングヒンジが煌めく“ラグジュアリーPC”と呼ぶべき優美なスタイルで、デザインにこだわるクリエイターやビジネスパーソンを中心に人気を博しています。

そんなHPのプレミアムPCブランドを代表する2モデルが、このたびリニューアルされました。そこで、新製品発表会のために10年ぶりに来日した、SpectreシリーズをはじめHPのパーソナルシステムズ部門で工業デザインを統括するバイスプレジデントのステイシー・ウルフさんと、最新モデルをいち早くチェックした写真家でマルチクリエイターの桐島ローランドさんの対談を実現。デザインに磨きをかけ、さらなるエレガンスを纏った新Spectreシリーズについて語り合ってもらいました。

HPのデザイン改革を牽引した、「PHI(ファイ)」というビジョンと情熱。

ステイシー・ウルフさん(左)の対談相手を務めるのは、写真家でマルチクリエイターの桐島ローランドさん(右)。Windows PCユーザーである桐島さんはハイスペックなPCを自作し、広告や写真集、ミュージックビデオや映画の製作でも活用している。

HPのパーソナルシステムズ部門で工業デザインを統括するステイシー・ウルフさんと、写真家で3Dグラフィックスなども手がけるマルチクリエイターの桐島ローランドさんの対談。まずはクリエイターの立場から、近年の制作環境の変化に関する話題からスタートしました。

桐島 数年前まではクリエイターが使用するPCと言えばMacという不文律がありましたが、Windows PCの操作性の向上や画像処理ソフトの充実など、ハードとソフトの両面から「是が非でもMacで」という旧来のメンタリティはなくなりました。僕をはじめ多くのクリエイターたちが、制作現場でもWindows機を使用していますから。

ウルフ 確かに以前のWindows PCは一般向け、Macはプロ仕様というイメージでした。しかし現在では、その境界線が曖昧になってきています。そしてHPも、双方に満足いただけるような製品を開発、提供しています。もちろん桐島さんのような人には、よりハイスペックなワークステーションもご用意していますよ(笑)。

桐島 今回リニューアルされた「HP Spectre 13」「HP Spectre x360」のスペックも素晴らしいですね。いずれもグレードの高いモデルには、最新で最速の第8世代プロセッサー、インテル® Core™ i7が搭載されているし、なにより嬉しいのがインターフェイスが豊富なこと。どちらにもUSBとUSB Type-C™(Thunderbolt™)が用意され、「HP Spectre x360」にはmicroSDカードのポートもある。このスペックなら、趣味で写真や動画を楽しむ人はもちろん、プロユースにも応えてくれそうです。またボタンひとつで起動する、この「プライバシーモード」機能も便利ですね。カフェで仕事をしたり新幹線で映画を楽しむ時も、周りの視線を気にせずにノートPCが使用できます。

リニューアルした新「HP Spectre 13」を手に、「この上質なスタイルとカラーリングは、日本の皆さんにも気に入ってもらえるはず」と力説するウルフさん。
ディスプレイと本体の側面、エッジ部分を内側にカットした特徴的なディテール。これはより薄さを強調するとともに、指先を引っかけてスムーズに開閉できるような機能性に基づくデザインでもあるのだ。

桐島 では、本題のデザインに関するお話を伺います。Spectreシリーズは、僕がこれまで見てきたノートPCの中で最もスタイリッシュなデザインだと思います。特に「HP Spectre 13」に採用されたセラミックホワイトは、樹脂製のつるりとした触感とは異なるとても上品な質感ですね。

ウルフ ありがとうございます。外装のデザインにはとてもこだわり、8つもの工程を経てこの色彩と質感を実現しました。塗装も特別なもので、よりなめらかで薄い被膜でいながら、従来の2倍以上の耐傷性を誇ります。実はSpectreシリーズを初リリースした2015年からこの外装を検討していたのですが、当時はこの仕様を大量生産する技術を確立できなかった。2年間の技術革新を続けることで、今回ようやく製品化することができたのです。

桐島 外装のデザインに2年も費やすとは、すごいこだわりですね。またヒンジ部に配された淡いゴールドとの配色もエレガントです。しかもディスプレイと本体のエッジ部分が内側にカットされていて、その薄さをより効果的に見せていますね。

ウルフ よく気づかれましたね。サイドのエッジ部分を内側に削ったことで、よりスタイリッシュなイメージを演出しています。またこれはデザイン面だけでなく、指先を引っかけてスムーズに開閉できるように機能面も考慮したものなのです。

桐島 ヒンジも特徴的ですよね。開いた時はリング状のヒンジが見えますが、閉じると本体に収まるのですっきりとした印象です。構造的にも、実に考えられた形状だと思いました。

ウルフ その通りです。これは高級家具のキャビネットなどから着想を得たもので、開閉時を美しく演出するためのヒンジ設計です。これまでのノートPCのイメージを払拭するため、新たに考案された機能的で美しいディテールなのです。

「天板のアッシュブラック×サイドのゴールドという、これまでのノートPCにはなかったカラーリング。とてもスタイリッシュだし、なにより斬新ですよね」と、細部までこだわった「HP Spectre x360」のデザインに感心する桐島さん。
360度回転し、多彩な使用モードを実現する特殊ヒンジ。このヒンジ部分もさることながら、今回の「HP Spectre x360」 は全体をよりシャープに仕上げることで美しいフォルムを際立たせている。

桐島 一方の「HP Spectre x360」はよりシックなカラーリングで、僕としてはこちらのほうが好みかな(笑)。デザインも印象的ですね。現在のトレンドはエッジを立たせたデザインですが、そういった時代の気分を、スリムなボディやソリッドなヒンジなど、いたるところから感じられます。いまノートPCに求められるデザイン的な要素が、かなり高い次元で製品化されていますね。

ウルフ ありがとうございます。これは2015年の冬にリリースした「HP Spectre x360 Limited Edition」から継承されている配色で、実は私もこのカラーリングがいちばんのお気に入りなのです(笑)。また今回は、さらにシャープなスタイルへとリニューアルしました。

桐島 Spectreシリーズの登場をきっかけに、HP製品のデザインが劇的に変化したように記憶しています。その契機となる、特別な出来事などがあったのでしょうか?

ウルフ 2014年に当時のCEOが提唱した「HPのデザインで世の中を変えよう!」というスローガンが、その発端ではないでしょうか。世界に3つの拠点をもつデザインチームは、まず「PHI(ファイ)」という全社的なビジョンを掲げました。それは我々のデザインが、Progressive(革新的)でHarmonious(調和)し、Iconic(象徴的)であるということ。このビジョンを経営側とクリエイティブが共有し環境を整えられたことで、皆が希望と情熱をもって精力的にデザイン改革に取り組むことができたのです。

桐島 全社的な取り組みが、「HP Spectre 13」や「HP Spectre x360」のような、これまでのノートPCにはなかったスタイリッシュなデザインを生み出したのですね。とても素晴らしいイノベーションだと思います。

ウルフ はい。それまでは我々が世界のトレンドを追いかけ分析していたのですが、「HP Spectre 13」が世界的なファッション誌やデザイン誌にも取り上げられるなど、いつしかHP製品がプロダクトデザインを牽引していくようになりました。またSpectreシリーズはデザイン先行の限定モデルではなく、HPのプレミアムブランドとして何世代にもわたり継続されていく可能性に満ちたシリーズだと考えています。

桐島 その洗練された上質なデザインはもちろん、卓越した先進の機能性やプロユースにも応えるスペックは魅力的です。所有する喜びを感じさせる、大人にふさわしいノートPCと言えそうですね。このSpectreシリーズが、将来どのような進化を遂げるのか。そしてさらなるイノベーションが起こるのか、とても楽しみにしています。本日は貴重なお話を伺えてありがとうございました。

ウルフ こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。我々HPが牽引するプレミアムPCという潮流、そしてSpectreシリーズの今後に、ぜひ期待してください。

新たなカラーリングを纏い、デザインを進化させた「HP Spectre 13」

リニューアルした新「HP Spectre 13」。CNCアルミニウム削り出しのボディをベースに、底面部には軽量かつ剛性に優れたカーボンファイバーを採用。その軽量かつ優美なフォルムが、所有する喜びを実感させてくれる。

刷新された「HP Spectre 13」でまず目を惹くのが、ボディに纏ったセラミックホワイトのカラーと質感です。AED(アニオン電着塗装)をはじめ、8つもの工程を重ねることでもたらされるなめらかな手触りは、これまでのノートPCにはなかったエレガントな質感を表現。しかも引っかき傷などに対する耐傷性は従来の塗装の2.5倍を誇り、指紋もつきづらいため、この美しい色彩と質感を長く保ってくれます。またヒンジ部に淡く輝くゴールドを配することでさらなる上質感を演出。所有する喜びを感じさせてくれるデザインとなっています。

「HP Spectre 13」のデザインで最も特徴的なのが、このリング状のヒンジ。美しく機能的にも優れたヒンジは、閉じると本体に吸い込まれるように格納される構造になっている。
キーボード上部に配置された、バング&オルフセンと共同開発したスピーカー。三角形の格子状にデザインされたスピーカーグリルとともに、新Spectreシリーズを象徴するディテールだ。

「HP Spectre 13」の高いデザイン性は、細部のディテールにまで徹底しています。象徴的なリング状のシリンダーヒンジは、高級家具から着想を得てデザイン。開いた時は美しいアクセントになり、閉じた状態では完全に格納されたシャープなフォルムを演出します。前モデルでは両端に配置されていたスピーカーは、キーボード上部へと移動。バング&オルフセンと共同開発したサウンドシステムのポテンシャルを効果的に引き出します。またこのレイアウト変更により、キーボードはフルサイズへと拡大。本体の両端いっぱいに広がり、15%大型化されたイメージパッドとともに、快適な操作性を実現しました。

セラミックホワイトを纏った天板×ヒンジ部に配された淡いゴールドの配色、そして4本ラインのロゴ“プレミアムマーク”が、HPの旗艦モデルであることを物語っている。

セラミックホワイト×淡いゴールドの優美なカラーリング以上に際立っているのが、新モデルのスリムなボディサイズです。今回タッチディスプレイへと進化したにもかかわらず、厚さは前モデル同様の10.4mmを維持。タッチ式ノートPCとして“世界最薄”を実現しました。さらに横幅は約17mmもコンパクトになり、収納性と携帯性が向上。加えてディスプレイのベゼルは前モデルに比べ上部で40%、左右で65%の薄型化を実現。フルHD・IPSディスプレイの高精細な映像とともに、快適なタッチ操作をサポートしてくれます。



HP Spectre 13 スタンダードモデル

OS:Windows 10 Pro
プロセッサー:インテル® Core™ i5-8250U
ディスプレイ:13.3インチ フルHD・IPSタッチ対応(1,920×1,080)
メモリ:8GB
ストレージ:256GB SSD(PCIe NVMe)
ネットワーク:IEEE802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.2
インターフェイス:USB Type-C™ 3.1×3(内ふたつはThunderbolt™ 3対応)
サイズ:W308×H225×D10.4(最薄部)㎜
重量:約1.11kg
価格:¥161,784(税込)

新生HPのデザインを象徴する、コンセプトモデル「HP Spectre x360」

異なる4つの使用スタイルを実現した「HP Spectre x360」。今回のリニューアルでは重量が0.2g軽減されて1.29gに、厚さも3mmカットされて13.6mmと、向上するスペックと相反するようにさらなるスリム化が図られている。

薄型ボディにアッシュブラック×ゴールドの優美なカラーリング、そして多彩な使用スタイルを実現した機能性で人気を博す「HP Spectre x360」。今回のリニューアルでは、さらなるデザインと機能の進化が図られています。最も特徴的なのが、随所に丸みを帯びていた前世代モデルと比較して、より角張った形状へと変更したこと。このディテールの変更によって、よりシャープでプレミアムな印象を与えるノートPCへと生まれ変わりました。また天板に梨地処理を施すことで、手にしっとりと馴染む心地よい触感を表現。使い込むほどに愛着が増す、上質な使用感を実現しました。また厚さと重量も、前モデルより薄くかつ軽量となり携帯性が向上。加えてベゼル幅もより薄型化を図り、視認性およびタッチパネルの操作性を高めています。

キッチンやベッドサイドなどノートPCが置けない場所でも、360度回転する「HP Spectre x360」なら、ヒンジ部を頂点とする「テントモード」にして省スペースでの設置が可能。またタッチディスプレイ仕様のため、キーボードなしで操作できる。
キーボードを底面にした「スタンドモード」なら、自立式のタブレットとしての使用が可能に。飛行機や新幹線の小さなテーブルでも、快適に動画を楽しむことができる。また指紋と顔の2つの生体認証機能を備えているので、セキュリティ対策も万全だ。

「HP Spectre x360」と言えば、360度回転する特殊ヒンジによる「ノートブックモード」や「タブレットモード」など異なる4つの使用スタイルを実現した機能性が特徴。もちろんその機能は前モデルから引き続き、リニューアルモデルでも踏襲されています。設置場所や使い方など利用シーンに応じたベストなモードを選択できるのは、コンバーチブル型ノートPCの大きな魅力です。また新モデルには、多彩な先進機能も搭載されています。たとえばログインは本体側面の指紋認証リーダーに加えて、ディスプレイ上部のIRカメラによる顔認証でも可能。セキュリティ対策を高めるとともに、快適な操作性をサポートしてくれます。さらにボタンひとつでのぞき見防止スクリーンを起動させ、隣の人からの視線をシャットアウトできる機能「プライバシーモード」も見逃せません。これは機密性が求められる法人向けの製品に採用されていたHP独自の機能ですが、外出先のカフェや移動中の電車でノートPCを使う人にとっては大変便利な仕様といえます。

※ アッシュブラックのみ

最薄部13.6mmのスリムボディは、折り畳んだ「タブレットモード」の使用でもストレスは感じない。新色のローズゴールド(左上)とナチュラルシルバー(左下)、アッシュブラック(右)のカラー展開。

今回のリニューアルでは、「HP Spectre x360」を象徴するアッシュブラックとナチュラルシルバーというお馴染みのカラーバリエーションで、自分のファッションや使用スタイルに合わせてカラーリングを選択できるのも嬉しいニュースです。さらに、この冬限定のリミテッドエディションとして、大人の女性にもお薦めしたいローズゴールドが登場。OSやプロセッサー、メモリ、ストレージなどの仕様が異なる、ベーシックモデルからパフォーマンスモデルまで4タイプがラインアップされているのも大きな魅力です。



HP Spectre x360 パフォーマンスモデル

OS:Windows 10 Home
プロセッサー:インテル® Core™ i7-8550U
ディスプレイ:13.3インチ・UHD(4K)ブライトビュー・IPSタッチ対応(3,840×2,160)
メモリ:16GB
ストレージ:1TB SSD(PCIe NVMe)
ネットワーク:IEEE802.11a/b/g/n/ac、Bluetooth 4.2
インターフェイス:USB3.1×1、USB Type-C™ 3.1×2(Thunderbolt™ 3)、microSDカード
サイズ:W307×H218×D13.6(最薄部)㎜
重量:約1.29kg
価格:¥204,984(税込)

問い合わせ先/HP Directplus コールセンター
TEL:0120-111-238
http://jp.ext.hp.com/notebooks/personal/spectre