サントリー「響」、世界を制した日本のブレンデッドウイスキーの秘密を解き明かす。

  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:廣松真理子
  • 文:西田嘉孝
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2017年のインターナショナル・スピリッツ・チャレンジにおいて、出品された全蒸溜酒の頂点に立った「響21年」。世界が評価する“響らしさ”とはいかなるものなのか。その誕生からひも解きました。

24面カットのデキャンタボトル。1日の24時間や季節の移ろいを表す24節気を意味しています。キャップのトップにあしらわれた「響」のロゴも美しい。

2000年代に入り、世界での評価を日増しに高めてきたジャパニーズウイスキー。各国から銘酒が集う世界的な酒類コンペティションにおいても、いまや日本のウイスキーは表彰の常連となり、その実力は世界中の酒好きたちに知られています。

国産ウイスキーをめぐるそうした状況のなか、今年のインターナショナル・スピリッツ・チャレンジにおいて、サントリーの「響21年」が達成した快挙。世界の蒸溜酒の頂点に立った、「響」ブランドのストーリーを紹介します。

ウイスキーの枠を超え、世界に評価された「響」。

世界的なシングルモルトウイスキー人気が続くなか、日本のブレンデッドウイスキーの「響21年」が快挙。世界を驚かせる受賞となりました。

2017年7月、ロンドンで開催された「第22回インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ」。世界70カ国以上から1480品ものスピリッツ(蒸溜酒)が出品されたこのコンペティションにおいて、「響21年」はワールドブレンデッドウイスキー部門最高賞の「トロフィー」に輝きました。「響21年」が部門最高賞の「トロフィー」を受賞するのは、今回で5年連続5度目。日本のブレンデッドウイスキーとしては、まさに他を寄せ付けない、突出した評価を誇っています。

上:「響21年」に授与された、部門最高賞と全部門最高賞のトロフィー。右:受賞式の様子。右から2番目が4代目チーフブレンダーの福與伸二氏。審査員長を務めたリチャード・パターソン氏も、「響21年の香味に宿る気品と洗練に加え、芳醇なアフターテイストが他を圧倒していた」と祝福しました。

コンペティションの終盤、会場が最も沸いたのは、エントリーされた全1480品のなかから、傑出したひとつの製品にのみ授与される「シュプリームチャンピオンスピリット」の発表時でした。壇上で読み上げられた品名は「響21年」。ウイスキーのみならず、近年話題のジンやラムをはじめ、エントリーされたすべてのスピリッツの頂点に、初めて日本のブレンデッドウイスキーが立った瞬間でした。

「『トロフィー』を獲得するだけでも大変なことですが、まさかシュプリームまで受賞できるとは驚きでした。長期間にわたる樽熟成による香味など、ウイスキーにはさまざまな特長がありますが、それらはすべての蒸溜酒に共通するものではありません。今回の「響21年」のシュプリーム受賞については、お酒そのものの美味しさはもちろん、華やかで芳醇に広がる香味や美しさといった"響らしさ"が、カテゴリーを超えて評価されたのではないでしょうか」

そう受賞の喜びを語るのは、サントリー4代目チーフブレンダー福與伸二氏。世界の蒸溜酒の頂点として、ウイスキーファンのみならず、一流の蒸溜酒のつくり手たちからも評価される"響らしさ"とは、一体どのようにして生まれるのでしょうか?

世界最高賞のウイスキーを生んだ、日本の感性と技。

4代目チーフブレンダーの福與伸二氏。響ブランドを継承していくとともに、「日本らしさを突き詰めて響を進化させたい」とも語ってくれました。

「日本人の感性で、世界で愛されるウイスキーをつくる」

そんな壮大な想いを胸に、1899年に現在のサントリーの前身となる鳥井商店を興した鳥井信治郎氏。鳥井氏は1923年に、日本初となるモルトウイスキー蒸溜所の建設に着手しました。以降、数多くのウイスキーを手がけ、日本にウイスキー文化を根付かせていきました。

「響」が誕生したのは1989年のこと。当時、鳥井信治郎氏から2代目マスターブレンダーを継いでいた佐治敬三氏は、「創業90周年の節目に、サントリーの粋を結集した傑作を出したい」という考えのもと、同社の最高峰ともいうべきブレンデッドウイスキーの開発を志したのです。

すべてサイズや形状が異なる、山崎蒸溜所のポットスチル。サントリーではこうしたポットスチルや酵母などを使い分け、多彩な原酒づくりを実現しています。
各蒸溜所では数千もの樽に詰められた原酒が眠りにつき、最適な熟成を経たタイミングで製品化されます。刻一刻と進む熟成の管理もブレンダーの役割です。

「響」というブランド名は、サントリーの「人と自然と響きあう」という企業理念から。24面カットの美しいボトルは、日本の季節の移ろいを表す24節気と、1日を刻む24の時間をイメージしたデザインです。サントリーがウイスキーづくりにおいて培ってきたすべての技術に加え、日本の伝統や自然に対する敬意、さらにはものづくりに対する日本人の美意識を結集して、「響」ブランドは生まれました。

サントリーは現在、山崎蒸溜所と白州蒸溜所というふたつのモルトウイスキー蒸溜所と、グレーンウイスキーを生産する知多蒸溜所をもち、世界的にも類を見ないほどの繊細な原酒のつくり分けを行っています。それぞれの蒸溜所でつくられる膨大な数の樽からタイプの異なる原酒を選び、香りや味わいといった「響」の品質を維持し続けるのもブレンダーの大切な役割です。

美しい装いを身に纏った、上質な味わいと香り。

多種多様な原酒のなかから、厳選されたもののみが「響」のブレンドに。ブレンドの技術やブランドのイメージは、代々にわたりブレンダーたちに継承される。

「しっかりとした熟成感と華やかさをもち、さまざまな香りが美しくバランスよく響き合う。それが我々の継承する"響"のイメージ」

そう話す福與氏は、4代目チーフブレンダー。歴代のマスターブレンダーやチーフブレンダーと共有した時間のなかで培われた、ブレンダーとしての知識や技術を総動員し、何度も原酒のテイスティングを行い、慎重にブレンドを重ねていきます。

華やかな樽香や熟したフルーツを思わせるフレーバーが、幾重にも重層的に広がる、繊細な日本人らしい味わいのブレンデッドウイスキー。多くの飲み手を魅了するそんな"響らしさ"は、日本の四季を封じ込めた原酒と、創業者であり初代マスターブレンダーでもあった鳥井信治郎氏の時代から連綿と継承される、サントリーのウイスキーづくりの技術によって現代へと受け継がれてきました。

「日本人の感性で、世界で愛されるウイスキーをつくる」

今年のインターナショナル・スピリッツ・チャレンジで「響21年」が成し得た快挙。それはまさに、いまから100年以上も前に鳥井信治郎氏が描いた壮大な夢が、現代に結実した瞬間でもあったのです。

楮(こうぞ)や三椏(みつまた)といった日本古来の植物が原料の越前和紙を使った「響21年」のラベル。一つひとつ手ちぎりで仕上げられます。さらには荻野丹雪氏による墨書など、細部に日本人の美意識が宿っています。

中味のウイスキーのみならず、ボトルやラベルデザインにも注目です。和紙デザイナーの堀木エリ子氏がプロデュースし、約1500年の歴史をもつ越前和紙を用いたラベルは、艷やかで気品ある佇まいが特長となっています。

さらには、その上に書家である荻野丹雪氏による「響」の墨文字が書かれ、世紀を超えて日本人が脈々と受け継いできた伝統や、繊細な美意識を宿しています。

そんな「響」ブランドの現在のラインアップは、「響ジャパニーズハーモニー」と「響17年」、「響21年」、そして「響30年」の4種です。

「もちろんウイスキーは嗜好品なので、リラックスして飲んでもらえばいいのですが、初めて『響』を飲む際や、その日に初めての『響』を飲む際には、ぜひ最初のひと口目だけ、気持ちをウイスキーに向けていただきたいですね。そうすると、すべての『響』に共通する、華やかでどこまでも広がるような香りを感じていただけると思います」

それが、福與氏のいう「響」の愉しみ方。ジャパニーズウイスキーの新たな歴史をつくった、日本が世界に誇るブレンデッドウイスキー。中味にも装いにもすべてに贅を尽くした最高峰のブランド「響」が奏でる繊細なハーモニーは、これからも人々の心を震わせ続けることでしょう。

「響」ブランドの現在のラインアップは、「響ジャパニーズハーモニー」と「響17年」、「響21年」、そして「響30年」の4種が展開されている。「響21年」と「響30年」は数量限定販売。

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●問い合わせ先/サントリーお客様センター TEL:0120-139-310

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