「世界で最も美しい」と称されるミッレ ミリア クラシックカーレース。90周年を迎えた伝統に寄り添い、ともに歩んでいるのが「ショパール」です。イタリア北部の街ブレシアからスタートしたレースの様子と「ショパール」による珠玉の腕時計をご紹介します。
イタリア北部の都市ブレシアは、毎年5月、特別な熱気に包まれます。それは、世界中の自動車愛好家が注目するミッレ ミリア クラシックカーレースがこの地で幕を開けるからです。
レース誕生から90周年を迎えた記念の年である2017年。5月18日から21日にかけてブレシアからローマ、そして再びブレシアへと戻るルートで「世界一美しい」と称されるレースが行われました。伝統を愛し受け継ぐこのレースの魅力を、オフィシャルパートナーとして欠かせない存在である「ショパール」の腕時計とともにご紹介しましょう。
クラシックカーへの熱狂が、街を包み込む。
レース初日。スタートの地となるブレシアの街には、いたるところでミッレ ミリアが振りまく華やかな薫りが漂い、浮き立つような空気に包まれます。
街の中心に位置するヴィットリア広場で行われているのが、レース前の車両検査を行う「シーリングセレモニー」です。レースに参加するすべての車両、ドライバーが順に広場を通過し、レーススタッフのチェックを受けるこの会場は、ギャラリーにとっては格好のスポット。このセレモニーを見学しようと数え切れない人が押し寄せます。
レースのルーツを辿るといまから90年前、1927年まで遡ります。1000マイルを一気に駆ける過激で過酷な公道レースは世間の注目を集め、多くの自動車メーカーがマシンを送りこんで鎬を削り、以降30年にわたって数々の栄光と熱狂を生み落としていったのです。
1957年からは長らく休止期間となりますが、1977年、タイムトライアル方式のイベントとしてミッレ ミリアは華やかに復活します。「27年から57年までのレースに参加したクルマとその同型車」という参加条件に、世界中のクラシックカー オーナーが自慢の愛車をイタリアにはるばる持ち込むと、希少な名車を目撃しようと多くの愛好家たちが足を運び、ほかに例を見ない盛大なイベントとして、その名を世界中に広めているのです。
誕生から半世紀をゆうに超えたマシンたちは、咆哮を響かせながら、イタリアの美しい田園風景を駆け抜けます。その様子は、エンツォ・フェラーリをして「世界で最も美しいレース」と言わしめたほどのもの。レース参加者はもちろんのこと、ギャラリーとしてレースを見守る人々の表情からも、この伝統の価値を守り、受け継いで行こうという気持ちが伝わってきます。
2017年、ブレシアのスタート地点に集まったのは、実に440台。伝統を愛し慈しむ人々の熱気は、初夏の街を覆いつくしていました。
ショパールとミッレミリア、その幸福な関係とは。
世界中のクラシックカーマニアが愛してやまない“ミッレ ミリア”を語る上で、外せないことがあります。それはオフィシャルパートナーとしてレースを支える「ショパール」の存在です。両者の幸福な関係は、クラシックカー愛好家であるカール-フリードリッヒ・ショイフレ共同社長の情熱のもとに始まりました。1988年から現在まで、ショパールはレースのオフィシャルタイムキーパーを務め、ショイフレ自身もドライバーとしてレースに出場しています。さらにもう一つ特別なミッションが、レース出場者へ贈られるスペシャルバージョンの腕時計、「ミッレ ミリア」モデルを毎回提供していることです。
赤い矢印の「Mille Miglia」ロゴをあしらい、視認性に優れた文字盤やインデックス、タキメーターをデザインコードとする特別モデルは、伝統のレースに対するリスペクトを表しながらも、高度なメカニックとスポーツパフォーマンスという、「時計」と「レース」をつなぐ絆を体現しています。2000年以降には高精度の証であるC.O.S.C.クロノメーターを取得していることも特筆すべき事実です。レースの歴史を彩ってきた珠玉の時計の中から、いくつかのモデルを紹介しましょう。
1998年、ヴィンテージの趣を漂わせる、記念すべき第1号の“ミッレ ミリア”モデル。おなじみとなった矢印ロゴはポリッシュ仕上げのベゼルにエングレーブされています。クロノグラフの起動&停止は、4時位置のプッシュボタンで。クラシックなレザーストラップを用いています。
1990年、初めて機械式のムーブメントを採用した“ミッレ ミリア”モデル。ポケットクロノグラフとして製造された唯一のモデルで、赤と黒、2本の針をもち、複数のラップタイムが計測できるスプリットセコンド式。タキメーターは4周分の目盛りが刻まれています。
1995年、クオーツムーブメントを採用した、精悍なブラックダイヤルのクロノグラフ。特筆すべきはこの年初めて、ダンロップのレーシングタイヤにインスピレーションを受けたラバーストラップを採用したこと。この特徴的なディテールは、現在まで受け継がれています。
1997年、ショパールロゴの下にAUTOMATICの文字が見える通り、この年から機械式ムーブメントを全モデルに採用。レース出場者以外にも、限定モデルとして発売されるようになりました。サブダイヤルのデザインはクラシックカーのダッシュボードをイメージした意匠に。
2012年、現代的なスペックでよりスタイリッシュになったモデル。ブラックアル マイト処理を施したアルミニウムベゼルを初採用。そこに 時間の目盛りを刻んだGMT機能搭載モデル。2000年以降はすべ てのモデルでクロノメーター認定を取得しています。
2017年、ミッレ ミリアの誕生90周年を祝うリミテッドエディションとして、90本限定で発表された記念モデル。ケース素材はローズゴールド、シースルーバックを採用しています。自社製のL.U.C クロノグラフムーブメントを搭載したフライバッククロノグラフでストラップはバレニアレザー。
伝統のレースを腕に纏う、ふたつの最新「ミッレ ミリア」モデル。
前ページでご紹介した90周年リミテッドエディションとともに、今年発表された「ミッレ ミリア」モデルがこちらの2本です。まず右の「クラシック クロノグラフ」は、ポリッシュ仕上げのケースにステップベゼルを備えた優雅な1本 。小ぶりな39 mmケースやシルバーもしくはマザーオブパールのダイヤルもラインナップしているので、ペアで楽しむことができます。
一方、左の「レース エディション」はブショネ仕上げのシルバーダイヤル、オイルタンクの栓を模したリューズなど、レーシングカーを思わせるディテールを随 所に採用した本格派のクロノグラフとなっています。
この「ミッレ ミリア 2017 レース エディション」は、スポーティさを纏った縦三つ目のクロノグラフです。ブショネ仕上げのシルバー文字盤に数字のインデックスはなく、ミッレミリアロゴとシンクロするシェブロン形の12本の夜光インデックスが使用されています。クロノグラフのプッシュボタンはアクセルペダルのような縦横の刻み入り。リューズのトップはステアリングをモチーフにした装飾が入っています。
ステンレススチール製のケースとラグはヘアライン仕上げが施され、細かな傷が目立ちにくい実用的な仕様。ケースバックは8本のビスで留められ、ミッレ ミリアロゴを入れたチエッカーモチーフが刻まれています。また、ラバーストラップは、ミッレ ミリアモデルの特徴的な意匠である、60年代のダンロップレーシングタイヤのトレッドパターンをあしらったもの。素早い装着ができるDバックルが装備されています。
スペックは自動巻き、ステンレススチールケース、ケース径44mm、COSC認定クロノメーター、ラバーストラップ、100m防水、世界限定1000本。価格は税込で¥891,000です。
そしてこの「ミッレ ミリア クラシック クロノグラフ」は、やや丸みを帯びたケースフォルムにスリムなラグ、ポリッシュ仕上げにステップベゼルを採用と、よりエレガントな雰囲気のクロノグラフ。端正な横三つ目で、サブダイヤルにはクラシックカーのダッシュボードのような書体でそれぞれMINUTES、SECONDS、HOURSの表記がされています。
クロノグラフ針も細身で、アラビア数字のインデックスもクラシックな書体。バックルは尾錠のタイプを採用し、ドライブはもちろん、エレガントなディナーにも着けていけるモデルです。
スペックは自動巻き、ステンレススチールケース、ケース径42mm、COSC認定クロノメーター、シースルーバック、ラバーストラップ、50m防水。価格は税込で¥653,400です。
時計の世界に限定品は数あれども、 毎年モデルを更新し、これだけの期間 続いているのは非常に稀といえるでしょう。そ の“伝統”はすでに30年を数え、レー スの歴史の一部として、その物語を彩 っているのです。これからどのような物語が紡がれようとしているのか、ますます興味は尽きることがありません。