紫LEDの照明でリアルな外光を感じるスペースに驚きます。
アルフレックスの製品の相談などができるコンサルティング・デスク。
「ああ、ここに窓があるわけではないんですね」と薫堂さんが言うのは、コンサルティング・デスクの奥にあるカーテンがかけられた一角。アルフレックスのスタッフに声をかけると、カーテンの奥が色を変え始めました。ここは、さまざまな時間の自然光を再現する紫色LEDを採用した光の壁なのです。
白く爽やかな朝日の色、力強い昼の光の後に壁面は西日のオレンジ色へと変化していきます。さらに夜の住まいの照明をつけた色味まで再現。1日を通じてカーテンが光をどのように受け止めるのかを実際のサイズ感で確かめることができます。ドレープがあり、透過し、陰影をもつ布は、光に合わせて色も大きく異なります。
「確かに同じカーテンでも、西にかけるか、東にかけるか、それだけでも大きく違うんですね。同じ生地でも仕立てが違うと随分と印象が変わりますね」
薫堂さんが初めて購入したソファは、この「エー・ソファ」。
「やはりいいソファですね」
そう言って薫堂さんが腰をかけたのが、アルフレックスの名作ソファ「エー・ソファ」。実はいまから25年前に27歳の薫堂さんが初めて買ったソファなのだとか。1986年に生まれたソファですが、それから数年後、薫堂さんは友人の家で出合い、座った瞬間にこれは欲しいと強く思ったことを振り返ります。
「清水の舞台から飛び降りる気持ちで初めて買った家具がエー・ソファです。いま考えると、自分への投資だったのかもしれません。このソファを買って、どんなに忙しい時でもいつも家に帰りたくなるようになったんです。このソファでそのまま寝てしまったこともずいぶんとありました。若い頃のそんな僕を受け止めてくれるソファだったんです」
堅牢なフレームに羽毛がたっぷり入ったやわらかいクッションをたくさん置いた、優しい座り心地とワイドなサイズ感。「角に座ると気持ちいいんですよ。いまは随分とファブリックの種類が増えたようですね」と薫堂さん。中身や素材は改良を重ねながらも、日本の住まいのための豊かな座り心地のソファというコンセプトは発売当初から30年以上変わりません。
「当時、カウチポテト族という言葉(ポテトチップを食べながらソファに座り、リモコンを片手にテレビやビデオを見るという当時の若者の新たなライフスタイルを指す)が流行して、そうした暮らしは、贅沢のように感じて憧れたものです。僕にとってソファはただ座るだけの場所ではなく、贅沢な場所なんです」
世界にひとつだけの天板に、薫堂さんもぞっこん。
机が美しいと打ち合わせスペースもアートな空間に変身します。
続いてガラス張りのミーティングスペースに置かれた木のテーブルを見つけるや、薫堂さんは吸い込まれるように移動していきました。これは薫堂さんが自宅で愛用するテーブルの作り手、リーヴァが特別につくったテーブル。あまり見たことのない木の表情に、薫堂さんは夢中になります。それもそのはず。このテーブルの天板に使われているのは、ニュージーランドに生育する樹高40m、樹径4mの巨木であり、現地の人々から「森の神様」と崇められるカウリという樹種。しかも、地球の気候変動により水位が上昇したことで森ごと埋没し、地中で炭化することなく眠っていた7000年~5万年前のものが偶然発掘されたことから神代木となり大変価値のある貴重な木材となった。
「このテーブルひとつでタイムトリップができるわけですね。この厚みもまた素晴らしい!」
リーヴァでは特別な木材が発見されると、もてる知識を総動員し、特別な家具として制作することがあるそう。この日、薫堂さんが触れたテーブルは長さ2m75cmのもの。購入者と原木を確認しながら部位(幹や根っこに近いなど)やサイズを決め、希望に応じて亀裂部にレジンを入れるなど顧客と対話しながらイメージに合うように特別な加工を施します。もちろん世界にひとつのユニーク・ピースです。
「このテーブルでオフィスを衣替えしたくなってきました。このテーブルはグリーンを置かずして、空間に自然を感じさせてくれそうです。大地が生み出した仏像……ご本像というのでしょうか、どこか宗教的ですね。このテーブルがあると、いい原稿が書けそうだな。身体感覚に訴えかけてくるインパクト、刺激がありますね。先ほどから何度も言うように、いい家具とは歴史を重ねるものだと思います。このテーブルに至っては何百年と使い続けられることでしょう。歴史がつくられる、その第一歩を刻める喜び。自分の気持ちを宿らせ、自分の足跡を刻む家具ですね」
ニュージーランドの北部で発見された巨木カウリをそのまま天板にした「セレリーナ」。美しさと迫力は別格です。