ジェレミー・ハケットが教える、「ハケット ロンドン 銀座」の楽しみ方。

  • 写真:江森康之
  • 文:小暮昌弘
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英国スタイルの真髄が満喫できる旗艦店を、ブランド創業者のジェレミーさんに案内してもらいました。

「ハケット ロンドン」の創始者であり、会長でもあり、デザイナーとしての仕事もこなすジェレミー・ハケットさん。

2016年3月31日、東京の新たなランドマーク「東急プラザ銀座」に、英国スタイルが凝縮された「ハケット ロンドン 銀座」がオープンしました。

英国のリージェント・ストリートにある本店同様にジョージアン様式をベースとしたこのショップは、東京・銀座のイメージを加えた独自のデザインで、アジア最大規模を誇る旗艦店となります。天井を高くとった贅沢な2フロア構成で、1階には上質なカジュアルウエアを始め、日本初お目見えとなるスポーツウエアやキッズウエアコレクションが並びます。カウンター横には、エドワード8世が実際に履いていた貴重な乗馬ブーツの展示も。2階はスーツコレクションを中心に、本場の「パーソナル テーラリング オーダー」ができるラウンジもあり、くつろぎながら本格派スーツなどのオーダーが楽しめます。

オープンに合わせて来日したジェレミー・ハケットさんに、このショップの魅力をくまなく聞きました。

ブランドの世界観を体感できる、「ジェレミーズ ハウス」とも呼べる場所。

レディメイドのジャケットやブレザー、チノーズ、カジュアルテイストのシャツが並ぶ1階のコーナー。

世界中のファッショニスタから「Mr.クラシック」と評されるジェレミーさん。幼い頃よりファッションに興味を抱き、サヴィル・ロウのテーラーで経験を積むなど、英国スタイルに関して豊富な知識と審美眼をもつ人です。ショップに並ぶのは、彼が提案する「エッセンシャル・ブリティッシュ・キット」。つまり、英国のライフスタイルに必要不可欠なウエアやアクセサリーなどです。どれも素材、デザイン、つくりを徹底してこだわったものばかり。1階に並ぶレディメイドのスーツやジャケット類も、「フォックス・ブラザーズ」に代表される英国伝統のファブリックを使い、英国流のビスポーク仕立てを再現しています。カジュアルウエアやスポーツウエアにしても、随所に英国のライフスタイルを感じさせる気品とエレガンスが漂います。

1階でぜひ見ていただきたいのが、ジェレミーさん自らが収集したヴィンテージのコレクションです。オープン時に展示されたのは、ウィンザー公ことエドワード8世が愛用した乗馬ブーツです。ニューヨークのメトロポリタン美術館にも展示された非常に貴重なブーツで、もちろん非売品です。

「朝早くにポートベローのマーケットで手に入れたのです。トラックから荷下ししているところを見つけ、その場で買い求めましたよ。王のブーツをつくっていたジョージ・クレバリーから『彼のものだ』とお墨付きをもらいました。実は蚤の市で支払ったのはわずか数ポンドだったんです」

ポートベローマーケットで見付けたエドワード8世(ウィンザー公)の乗馬ブーツを前に、笑顔を浮かべるジェレミーさん。

英国人を語る上で欠かせないものが、「センス・オブ・ユーモア」の精神です。英国紳士はユーモアを交えながら話すのが常ですが、英国スーツを着こなすジェレミーさんが取り出したのは、小さなブックマーカー。これをポケットチーフ代わりに、スーツの胸元に飾ってみせてくれました。店内にディスプレイされたスーツの胸元にも同じブックマーカーが飾られています。

「服装に関しては遊び心も大切です。このブックマーカーは私の愛犬をモチーフにデザインしたんですよ。ディナージャケットに白いブックマーカーを挿すのも面白いのでは」

そんな彼のユーモアセンスはストアのインテリアにも生かされています。重厚な扉のハンドルはブランドロゴの傘をモチーフにしたもの。フィッティングルームの洋服掛けは老舗「フォックス・アンブレラ」のハンドルを使った特注品で、「自宅にも同じものがありますよ」とジェレミーさん。カウンターのライトカバーに使われているのはシルクハットです。店内にはたくさんの写真が飾られていますが、実はこの中にも本人が撮影した写真が含まれるそうです。それらはプライベートな所蔵品で、ロンドンのチェルシー地区にある彼の邸宅「ジェレミーズ ハウス」を彷彿とさせます。

愛犬がモチーフのブックマーカー(¥4,000)を胸ポケットに飾るのがジェレミー流。英国製スーツ¥230,000
フィッティングルームの壁に設置された洋服掛けは、英国の老舗ブランド「フォックス・アンブレラ」に特注したもの。
1階カウンターに並ぶライトにも注目を。フォーマルウエアに欠かせない、クラシックなシルクハットが使われています。
重厚な扉のハンドルは、ブランドロゴにも描かれる傘がモチーフに。

純英国製のスーツから老舗ブランドとコラボした革製品まで、“英国”が一堂に。

2階には正統派のスーツが並びます。英国で仕立てられたスーツや、シャツ、コートなどが豊富なラインアップで揃います。

2階にはスーツ、コートといった正統的なコレクションが揃っていますが、銀座店でしか手に入らない、純英国製のアイテムも並びます。“キング・オブ・フランネル”とも呼ばれる「フォックス・ブラザーズ」のファブリックで仕立てられたスーツや、「ベンタイル」コットンを使いロンドンで縫製されたコート、シルクのような肌触りの「トーマス・メイソン」のシャツ地を使ったドレスシャツなど、いずれも素材から仕立てまで、すべて英国ものです。「これらのコレクションは、長く使っていただくと“味”になる素材やつくりを採用したものです。お気に入りのものを長く大切に着るのも英国紳士の流儀と言えます。そんな流儀にあった“本物”を集めました」とジェレミーさん。

同じフロアには、「パーソナル テーラリング オーダー」をゆったりと楽しめるラウンジもあります。オーダーでスーツを仕立てるのも英国スタイルの醍醐味と言えるでしょう。

「オーダーでは、自分の好みを素材や裏地などに反映できますからね。もちろん、ボタンやステッチなどのディテールに変化を加えたりすることもできます。私もスーツを自分のアイデアで仕立てることが大好きなんです」

ラウンジにあるガラスケースには英国王室御用達のブランド「スウェイン・アドニー」の革小物が並んでいます。そうした英国の老舗とコラボレーションした銀座店限定のコレクションも見逃せません。「スウェイン・アドニー」のアタッシェは、かのジェームズ・ボンドが愛用したことでも知られるアイテムで、特別にライニングをブランドのイメージカラーであるネイビーにしています。英国のラグジュアリーブランド「グローブ・トロッター」のトラベルケースもブランドカラーであるネイビーを採用し、 ライニングをユニオンジャックカラーのロンドンストライプ柄に変更。どれもジェレミーさん自らデザインしたものです。

「私はたくさんのものをデザインしていますが、自分がやるよりもプロにお願いしたほうが素晴らしい出来栄えになると思うものに限って、外部のブランドとコラボするようにしています。もちろん、そのブランドが英国にあることもポイントになります。『グローブ・トロッター』は、私もブリティッシュ・グリーンのボディに赤のイニシャルを入れたものを各サイズで揃えていますよ」

英国ノーサンプトン製の革靴(¥68,000)は、銀座店限定商品。
店内には膨大な数の写真や絵画が飾られています。中には20年以上前に撮られたジェレミーさんのポートレイト写真もあります。

英国スタイルの素晴らしさは、いつの時代も古びて見えることのないスタンダードなアイテムと紳士のお手本と言うべき着こなしにあります。そんな英国スタイルをベースに、現代を生きる男性のために、ディテールなどをモダンに進化させ、ユーモアなど、ちょっとした“ツイスト”を加えたのが、「ハケット ロンドン」流のクラシックスタイルと言えます。

「ハケット ロンドン 銀座」に並んでいるのは、そんなモダンジェントルマンのための“本物”のワードローブばかり。さらにショップには、ロンドンにある彼の邸宅=ジェレミーズ ハウスに招かれたような心地良さとラグジュアリーな空気感が漂います。日本にいながらにして英国同様のショッピングが堪能できる稀有なショップ、英国マニアならずとも訪れる価値がある場所と言えます。(小暮昌弘)

ハケット ロンドン 銀座
東京都中央区銀座5-2-1 1F
TEL:03-6264-5362
営業時間:11時~21時(不定休)
www.hackett.com