自転車乗りからビジネスマンまで虜にする、機能的ファッションブランドの2016年春夏展示会に潜入!
日本のファッションブランド「ナリフリ(narifuri)」が登場する以前は、自転車愛好家のワードローブに最適な大人向けのデイリーウェアはほとんど存在しませんでした。ナリフリのデザインは、着用したまま体を曲げてペダルを漕げるほどの動きやすさや、ポケットのアクセスのしやすさなどが深く考えられています。しかもそれらの服は、自転車を降りて職場に向かったり、タウンユースとして街歩きするときでも、見栄えのするスタイリッシュさを兼ね備えているのです。
新作を発表した2016年春夏展示会で、ナリフリはブランドのポジショニングを明確に示すライフスタイル提案を行いました。インテリアスタイリストの黒田美津子さんを迎えて、「代官山 T-SITE GARDEN GALLERY」に出現させた“リビングルーム”の全貌をお届けします。
アクティブに日常を過ごせるファッション。
ナリフリのコレクションは大半が、アクティブな活動のできるユーティリティウェア。定番人気のバックパック(上段、上写真)は、フラップの裏にヨットの帆などに使われる特殊な生地「ターポリン」が貼られ、防水性が高められています。サイドポケットの底には、雨が侵入したときに排出する水抜き穴つき。フラップ開閉の手間を掛けずに内部にアクセスできるサイドファスナーを取り付け、使いやすく工夫されています。金具が高級感のあるメタリックな素材でミニマルなシルエットを有するこのバッグは、スーツ姿でもサマになり、通勤用としても大活躍するでしょう。
スポーツアウターの定番中の定番が、テーブルの上に置かれたパーカ「プルブレイカー」(上段、下写真)。被って着るタイプのオールウェザー対応型です。素材は撥水、防風、透湿に優れ、引き裂きにも強いリップストップ生地。ファスナーは止水仕様で、雨の侵入をシャットアウト。自転車ライフをスタイリッシュに彩る一着です。
ナリフリが近年注力しているのがビジネスラインのアイテム。通勤で自転車を活用する人はもちろん、飛行機での移動途中でも気軽に着用できるドレッシーさのあるシリーズです。テーブルの上に広げられたジャケット(下段、上写真)は、形状記憶素材を用いてシワすらも味になるように考えられたモデル。撥水加工が施されており、汗濡れや少々の雨も気になりません。内側のポケットの充実ぶりも特筆モノで、大判ポケットにはモバイル機器やノートブックを、小ポケットには財布や小物類を収納して、手ぶらで快適に過ごせます。
裏地がカムフラージュ柄のジャケットとパンツ(下段、下写真の左2点)は、シワになりにくく濡れても乾きが早い「クールマックスシアサッカー」素材が用いられています。ポケッタブルとして丸めて持ち歩くような使い方が想定されており、旅行先でのドレスアップに最適なアイテム。人体構造に基づき前方にカーブさせた袖に、本格テーラリングの精神が息づいています。
デザイン家具とアンティークと。
自転車メーカーもライフスタイル提案を行うようになった昨今の風潮の中で、ナリフリはこの展示会で一つのモデルケースとなるリビングルームをつくりました。上質な暮らしとは何か、趣味の良さとは何か、“自然体”の現代的なあり方とは何かが、ここで示されています。
インテリアスタイリストの黒田美津子さんがテーマにしたのは、「緑のある生活」。「インドアのディスプレイでも、アウトドアを感じさせる家具やインテリアをセレクトしました。モダン家具を配置しつつ錆びた自転車などのアンティークをプラスして、ナリフリらしいミックスカルチャーを表現しました」と黒田さん。「ナリフリはスポーツウェアと考えると高価格帯の贅沢なものです。今回の展示でも、こうした大人の余裕を感じさせることができたら」
1940年代にジャン・プルーヴェがデザインしたインダストリアルなオフィス家具を、復刻させてアレンジを加えた「Prouvé RAW: Office Edition(プルーヴェ ロゥ オフィスエディション)」や、シンプルでモダンなイタリアの照明器具「フロス」、北欧はデンマークの「HAY」らの上質なプロダクトを並べながら、さりげなく小物で優しいニュアンスを演出。「大きな家具と小物とのコントラストを狙っています。ぬいぐるみを置くなどのお茶目さも。この展示はアメリカのミッドセンチュリーのような感覚ではなく、ヨーロッパをイメージ。銀から金に移ってきたインテリアのトレンドも意識して、金属では真鍮やコッパー(銅)を多く用いました」。
昨年の2015年にはニューヨークに直営店もオープンさせ、インターナショナルに広がるナリフリの世界。従来のファッションブランドの枠組みに収まらない彼らの活躍は、これからの日本発信ファッションの試金石になっていくかもしれません。(高橋一史)