Pen別注のBDシャツを、スタイリスト池田さんが着こなしました。

  • 写真:江森康之
  • 文:小暮昌弘
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カスタムシャツの名門「インディビジュアライズドシャツ」にオーダーした、ストライプとギンガムチェックの2種類のシャツ。人気スタイリスト池田尚輝さんに、着こなしのテクニックを訊きました。

ストライプシャツを、オーバーサイズで着る。

「インディビジュアライズドシャツ」へのオーダーで指定したのが、このシャツの定番の型であるスタンダードフィットに対して、「ニュースタンダードフィット」ともいうべきパターン(型紙)です。従来のサイズより横幅を2インチほどアップさせたもので、まだどこの店にも並んでいません。同時に襟はやや小さめに変え、全体をカジュアルで大人っぽい印象に仕上げています。写真の「ベンガルストライプ」は今回のオーダーのひとつで、平織りのなめらかなブロード生地に上品さが漂います。
「ストライプのシャツはジャストサイズで着てもまったく問題ないのですが、私はあえて1インチアップのオーバーサイズで着てみました。最近、ストライプのシャツは、ゆったりと着ることも多いので……。ボリューミーなトップスに合わせて、パンツもやや太目にするのがポイントでしょうね。大きめのシャツにアクセントとして合わせたのがニットです。肩掛けにしてみましたが、ショール感覚で結んでみると面白いですね」と、その着方を解説してくれました。
いつも着ているサイズよりも1インチアップで、ゆったりとシャツを着る。
アンティークのメタルバンドの腕時計で、シャツと同じく、上品に。
小ぶりにデザインした襟に合わせて、袖の幅も5mm細くした。
実は池田さん、以前にトランクショー(受注会)でインディビジュアライズドシャツのシャツをオーダーした経験があります。「そのときは素材をシャンブレーにしました。ジャケットを着てタイを締めてもいいように、ワイドカラーで注文しました」と池田さん。Penがオーダーしたモデルは、襟のデザインをボタンダウンタイプにして、よりベーシックに。なめらかなシャツ素材に合わせて襟にも芯地を入れ、仕立て映えする“大人”のストライプシャツにデザインしました。
「サイズアップしたシャツですが、裾出しで着ても、着丈が長くは見えませんね、絶妙なサイズ感です」と、池田さん。わざとカフスのボタンをはずしたままシャツを着て、ユルさを表現しています。オーバーサイズでシャツを着るときには、こんな袖口のテクニックも大事かもしれません。
古着を藍染めでリメイクしたニット。ストライプの青とも相性抜群。
オーバーサイズのストライプシャツにアクセントとして池田さんが組み合わせたのが、藍染めのニットです。「腰に巻くのも試しましたが、やはり肩掛けにしました。去年は女子の間に流行りましたが、男ならば、これは定番でしょう! アクセントとしてニットを使いますので、色や形に変化をつけないと、と思います。(片方の)端だけを絞ったり、シンメトリーではなく、ちょっと形を崩して肩掛けするのもいいのでは」と池田さん。シャツの着こなしに確かなアクセントとなっています。ここではストライプと同系色のニットを選んでいますが、鮮やかな色目を選べば、アクセントとしてもっと強調することにもなります。シャツを1枚で着こなす際に、ぜひ試してみてください。

カジュアルさとユルさを加えてみる。

シングル針を使った美しい縫製。「着心地にもいい影響を与えている」と池田さん。
ストライプシャツのよさは上品さにあるといえますが、個性的に着こなすときには、池田さんが提案するように、オーバーサイズでゆとりをもって着こなせば、カジュアルさとユルさが表現できます。「ストライプって、真面目そうに見えるでしょう。だからあえて、こんな着こなしにチャレンジしたのです。ボトムスもボリュームあるもので、これは“カラー”のパンツです。シャツの着丈はジャストサイズのものよりも少し長くなりますが、ボトムスのボリューム感を考えれば、このくらいがちょうどいいと思います」と池田さん。
太めのパンツのサイドラインに入ったシャーリングもカジュアルさを演出し、裾も無造作にロールアップしています。シャツを含めてどのアイテムもスタンダードなデザインですが、サイズ感やシルエットを変えることで、全体の印象が違って見えるはずです。
裾出しでも、バランスがいい、シャツの着丈。身幅もほどよいサイジング。
ロールアップしたパンツに、グルカサンダルを。上品なリゾート感が漂う。
ニットを肩に巻いただけでも絵になるのが、スタイリストらしいワザ。
ストライプシャツをカジュアルに見せるために、池田さんが「飛び道具」のように使ったのが靴です。「グルカサンダル」と呼ばれるもので、昔インドで英国軍の傭兵だったネパール人兵士(グルカ兵)が履いていたサンダルです。「フランスの”パラブーツ”の製品で、太めのパンツにも合いますし、指の出る一般的なサンダルよりも上品に見えます」と池田さん。
着こなしのアクセントになったこの靴は、ストライプシャツの上品さにも合うし、ワイドなパンツの印象を中和する働きも。パンツと色みを統一してあるので、サンダルだけが悪目立ちすることもありません。こんなコーディネートをすれば、洗練された印象のストライプシャツも、カジュアル、あるいはモード的なテイストを醸し出すアイテムへと進化するのです。池田さんの着こなしがそれを証明しています。

ギンガムチェックは、上品な“はずし技”で。

ストライプシャツに続いて、池田さんが着こなしてくれたのが、ギンガムチェックのボタンダウンシャツ。「ベンガルストライプ」のシャツと同じくコットン100%のブロード素材で、これも「スタンダードフィット」を調整したモデルです。
「ギンガムって、最近、いいですよね。個人的には柄がもうちょっと大きくてもいいと思いますが、汎用性を考えると、このくらいがちょうどいいかもしれません。カジュアルさが感じられる柄ですし、ブロードっていう素材にキレイめ感があります。その感じ(テイスト)をひろってコーディネートを考えてみました」と池田さん。今度はジャストサイズを選び、ボトムスはショートパンツを合わせています。
「短パンだけど、あえてタイを。タイをするけれども、シャツはタックアウト(裾出し)で」。“はずし”ワザを随所に入れた、池田さん流のギンガムシャツ・コーディネートです。
「この着丈だと、裾をインにしても、アウトしても着られます」と池田さん。
ギンガムのボタンダウンシャツを着た池田さん、このシャツも気に入った様子です。
「着てみるとやはり、いいですね。しっくりきますね。今日は気持ちがすごくよかった、と思ったら“インディビジュアライズドシャツ”を着ていた、ということが本当にあるんですよ。生地感とフィッティングがいいのだと思います」と絶賛します。
このギンガムシャツも、袖口の幅を従来よりも5mm狭めた「スポーツカフ」を採用し、袖をロールアップしやすくなっています。袖口にはライニング(芯地)を入れてあるので、袖口がきれいに仕上がり、ボタンもかけやすい。池田さんはカジュアルな着こなしに仕上げてくれましたが、ギンガムはニットタイがとても似合う柄で、ビジネスでもジャケットなどと好相性、といえるでしょう。
ロールアップしてもサマになるのが、スタンダードシャツのよさ。
「コディ サンダーソン フォー タカヒロミヤシタザソロイスト」のバングルが、ロールしたシャツに似合う。
シャツを主役にして1枚で着こなすときにぜひ参考にしたいのが、池田さんのようなアクセサリーづかいです。ロールアップしたシャツの袖口から覗くのが、バングルです。色はシルバー、シンプルなデザインで、シャツよりも目立ってしまうことはありません。逆の腕には時計をしていますが、バングルと同色のシルバーで、アンティーク時計らしい抑えめのデザイン。主役のシャツを引き立ててくれますし、アクセサリーをたくさん身に着けているという感じにも見えません。カジュアルにまとめても、どこかにお洒落心を入れたい。そんなときにはぜひ試したいテクニックといえます。「カジュアルにして、上品」というギンガム柄ならではのテイストとも、共通しているといえます。

ビジネスからオフまで使える正統派シャツ

「コンストラクションヨーク」と呼ばれる、外側に縫い目が見えない、美しい袋縫いを採用。
「ギンガムチェック」は格子柄の中でもいちばんシンプルな柄で、通常は白と他の色の組み合わせで使われますが、今回、Penが採用したのは、最も人気のあるネイビーと白の小柄のチェック。生地は平織りのブロード素材です。年間を通して着られますし、ビジネスからオフまで使い回せる柄、素材といえます。
「トランクショーでシャツを注文したときに感じましたが、インディビジュアライズドシャツは、まとめてオーダーしておくといいシャツです。いつでも、どんな着こなしにも使えますから、気に入ったヤツを4、5枚もっていればすごく便利だと思います。このシャツは既製品ですが、絶対もっていて損はないシャツだと思います」と池田さん。着るほどに、洗うほどに自分の分身のような存在になり、長く着続けることができるシャツといえます。
ここ数年流行のビットローファー。素足に履くのが、お洒落だ。
「トップスのシャツがジャストサイズですので、ボトムスの短パンは、ボリューム感あるシルエットを選びました」という池田さん。ショートパンツは「グルカパンツ」といわれる、腰にストラップが付き、プリーツが入ったモデル。ウミット・ベナンがデザインしていた頃の「トラサルディ」の製品です。「シルエット的にも変化が出ますし、着こなし全体に表情を与えてくれると思います」
ショートパンツの裾をわざと折り返して、さらにアレンジを加えます。足元はビットローファーを素足で。アメリカ発のブランド「インダストリー オブ オールネイションズ」のこの靴は、ビットとタッセルが両方付いた独特のデザインが特徴的です。「キレイめ&カジュアル」というスタイルでは、スニーカーよりも革靴が、夏ならローファータイプが断然似合います。
ジャストサイズのシャツに対して、ショートパンツはボリュームあるモデルを合わせる。
※シャツ以外のアイテムはすべて、池田尚輝さんの私物です。
「インディビジュアライズドシャツ」は、アメリカでは高級メンズショップを中心に扱われるブランドです。本国では「テーラードシャツ」と呼ばれるくらい、美しい仕立てとスタンダードな味わいをもつシャツです。今回、池田さんはこのシャツを使って上品さが漂うカジュアルなスタイリングを披露してくれましたが、そんな着こなしにネイビーのギンガムシャツほど似合うシャツはありません。そして、ストライプのボタンダウンシャツも同じくです。ジャケットが必須のビジネススタイルから、休日のカジュアルスタイルまで、オールマイティに使い回せる便利なシャツ。Penでしか買えない特別な「インディビジュアライズドシャツ」です。さぁ、あなたはどんなアドリブ=遊び心を加えて、このシャツを着こなしますか?