オニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオ、舞台裏 in TOKYO

  • 写真:江森康之、宇田川 淳(still life)
  • 文:高橋一史
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東京で開催された2014-15年秋冬コレクションのバックステージに密着し、デザイナー、アンドレア・ポンピリオが思い描く世界に迫りました。

エネルギッシュなショーの裏で。

客席に置かれているのは、来場者へのプレゼントのタイガーマークつきキャップ。
アンドレアは、ショーの監修も自ら行いました。服のデザインだけではないファッションデザイナーの豊かな才能の一片が見て取れます。ショー開始は20時でしたが、ベルサール渋谷ファーストのショー会場は一日中貸し切られ、午前中からリハーサルとモデルのヘアメイクに追われました。
彼が東京の街中や若者から着想したショーのイメージテーマは「アーバン・スペースマン」。レーザービームが行き交う中で、男女合わせて30名ものモデルが一人1セットだけの新作を着用して歩く試みです。東京コレクションに参加する日本ブランドのショーとは一線を画す贅沢なステージとなりました。ショー経験を積んでいることもあってか、彼はバックステージでも終始和やかな表情。それでも本番直前には厳しい顔つきになり、モデルのスタイリングを自ら直してランウェイに彼らを送り出していました。
ショー直前の出待ちで、緊張感が高まっているモデル。
モデルの一人ひとりに目をやりながら、着こなしを直すアンドレア。

スポーツウェアのアーバンな解釈。

タイガー模様を彷彿とさせるボーダーのバックパックは人気を呼びそう。
ショーで発表された2014-15年秋冬コレクションは、このブランドらしいモノトーンの色彩がグラフィカルに踊る、都会の中のスポーツウエア。レイヤードのテクニックを駆使して、大胆な配色のウエアをさらにパワフルに見せています。
アウトドア感覚のアウターのインナーに着たシャツには、ネクタイが締められています。このように、自由な服装を楽しめるようになった現代の仕事のシーンに応用できるアイデアが随所に込められています。新しい色として提案されたのはオレンジで、ウエアだけでなくバックパック、マウンテンブーツをベースにしたスニーカーなどで用いられ、モノトーンの装いに動きを加えています。
色では少数ですがボルドーも登場しました。ブランドのマークであるタイガーモチーフも、もちろん健在。Tシャツ、スウェットシャツなど至るところにつけられ、強いアイコニックなスタイルが打ち出されています。
ウィメンズウエアは、クールなイメージながらメリハリのあるシルエットがガーリー。
ハイテク素材のライダースジャケットふうブルゾン。
ショーのラストはモデル全員がヘルメットを被り再登場。

モデルたちのチャーミングな素顔。

大勢のヘアメイク・スタッフが、慌ただしくモデルのヘアメイクを整える最中のふとした瞬間に、バックステージならではのユニークな光景が表れます。サービス精神旺盛な若いモデルたちは、カメラを向けられると、何かしなきゃ!と、気取らないオフの顔を見せてくれます。ショー本番の緊張とは打って変わったリラックスした表情がとても魅力的です。
モデルとは、初対面のさまざまな人と出会い、その場に応じて適切に服を着こなし、クライアントの要求に応えて美しい姿を演じきる仕事。オニツカタイガー×アンドレア ・ポンピリオのショーに招かれたモデルは総勢30名。すべて、デザイナーのアンドレア自身が認めたモデルたちばかりです。ファッションデザイナーが提案する理想的なスタイルを多くの人に伝えるナビゲーターでもある彼らの、舞台裏でのチャーミングな表情をお楽しみください。
次々にポーズを変えて楽しませてくれたKira(中央)。 
休憩中にひと眠りする男性モデル。
キュートな表情が素敵! リハーサル前のQuirine(左)。ショーで使われたヘルメットを持っているのはAxel。
メイク中のVictor。

2014春夏アイテムのセレクション。

オニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオの今季春夏コレクションは、ルーズに着るストリート感覚のウエア。同ブランドならではの白黒のモノトーン配色をベースに、イエローを効かせて今年らしく仕上げられています。
全体的には1980年代のロサンゼルスがイメージされ、当時のヒップホップから着想したアイテム、シルエットが展開されています。多用されるグラフィカルな模様は、デザイナーのアンドレアが得意とするコンテンポラリーなデザインです。このブランドはタウンウエアですが、軽いスポーツには対応できる機能性があります。自由なデザイン発想の中にも、ブランドのアイデンティティがしっかりと形づくられているのです。ご紹介しているのは、いま現在、直営店の店頭に並び、ウェブサイトでも購入できるアイテムばかり。本格的に夏を迎える前に、お気に入りを見つけてはいかがでしょうか。
(右)オニツカタイガーの定番「メキシコ」をベースにした、メッシュ素材の涼しげなスニーカー¥15,120、1982年に開発されたランニングシューズがデザインベースのスニーカー¥16,200
ゆったりと着たいコットン・ベースボールシャツ¥15,120、スプレーアート調プリントのコットン・ネクタイ ¥9,720、タトゥー調プリントのコットン生地の長め丈ショーツ¥19,440、タトゥー調模様のコットン・ポロシャツ¥24,840
本格スポーツにも耐え得る、大容量のバックパック¥43,200。白、黒、黄のブロック配色がモダンで、斜めがけできるウエストバッグ¥18,360

アンドレア・ポンピリオが語る、デザイン発想と成功への道のり。

インタビューを行ったのは、ショーが終わった直後の夜のこと。アンドレアが最初に口を開いたのは、もちろんショーについてです。
「いまは最高の気分です! ショーに関しては100%満足がいくものでした。でも、ほかにもう一つやりたいことがあるのですけど……。この後で大好きな和食を食べに行きます。今日が本当に満足できる一日になるのかは、その食事しだいですね(笑)」
バックステージでも楽しい光景を見つけてはスマホで撮影していた彼らしいユーモアのある一言でした。
そんな彼は、オニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオと別に、自身のシグネチャーブランドも手がけており、忙しい日々を送っています。デザインするにあたって、2つのブランドをどのように解釈しているのでしょうか。
「まず、アンドレア ポンピリオは、いまの私自身が投影されたコレクションです。上質な素材を使ったテイラードジャケットや、Vネックのブラウスなどをアイコンにしながら、クラシックなメンズウエアをいかにリラックスさせるかを発想の主軸にしています。対してオニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオは、20歳だった頃の自分を思い起こしたデザイン。スポーツが好きで、ストリート感覚にあふれていた当時の自分、つまりいまなお自分の中にある若い感覚を引き出しているコレクションです」。 
デザイナーにとって重要なテーマである、ブランドごとのデザインの住み分けが彼の中では明確にできているようです。

続いて、アンドレアがデビューして間もなく母国イタリアで注目されるようになった経緯を教えていただきましょう。
「ファッション業界の低迷もあり、最近は新人デザイナーが世に出にくくなっています。そんな中で、いまの時代らしい『リラックス』『スポーツ』といった要素のある私の服はすぐに評判を呼び、短期間で知名度を上げることができました」
過去に「プラダ」や「グッチ」で働き、パリでは「イヴ・ サンローラン(現サンローラン)」、NYでは「カルバン クライン」などで経験を積んだアンドレア。彼の服には、世界中のモードのエッセンスが感じられ、旬のストリートの流行も取り入れられています。ラグジュアリーブランドとも狙いが異なるリアリティに満ちたアプローチが、人々の求める新しいファッションの在り方と合致したのでしょう。

「イタリアのメンズ展示会『ピッティ・ウォモ』で新人賞を得たことで、いいスタートラインを切れました。彼らは3シーズンもショーのスポンサードを行ってくれたのですから。のちに、ジョルジオ・アルマーニが始めた新人デザイナー支援にも選ばれました。自分でショーを企画していた時、ファッション雑誌『ヴォーグ・イタリア』の編集長フランカ・ソッツァーニとアルマーニに声を掛けられたのです。それは、アルマーニが所有する会場を使ってショーをやらないか、というものでした。こうして世界中のメディアの注目度も高まり、今に至っています」
閉塞感が漂うと揶揄されることもある近年のメンズモード界にも、アンドレアのような才能のあるデザイナーは芽を出しています。日本が世界に発信するオニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオもまた、次の時代への大きな架け橋として、重要なブランドになっていくに違いありません。
上段、上写真:ラフに、デニムのカバーオールジャケットを着たアンドレア。
上段、下写真:たくさん重ねづけしたブレスレットの配色もお見事!
下段写真:2014年春夏「アンドレア ポンピリオ」より。ボーダーのスーツは今季のシンボリックなアイテム。ゆったりとした白Tシャツ+イージーパンツのルックは、流行のデザイン。柄シャツ+柄ショートパンツのルックでモチーフになった図案のイメージは、アフリカ、モロッコ、シチリアの夏。ボーダージャケットのルックのインナーに着ているのは、アイコニックなVネック・ブラウス。

Andrea Pompilio
1973年、イタリア生まれ。父が建築家、母が画家、祖母がブティック経営という環境で育ち、幼少の頃からファッションデザイナーになる夢を抱く。ペザロの芸術大学とミラノ・マンゴーニ・インスティテュートでファッションを学び、有名ブランドで経験を積んだのちに2011年秋冬シーズンにシグネチャーブランドを発表。2013年1月のピッティ・ウォモにて、コラボレーションブランド「オニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオ」を発表。

問い合わせ先/アシックスジャパンお客様相談室 TEL:0120-068-806
オニツカタイガー http://www.onitsukatiger.com/ja-jp/