専門店が供する、肉厚な馬刺しの旨味を噛み締める渋谷・並木橋の夜。

写真:尾鷲陽介 文:岡野孝次

馬刺しに焼酎といえば、酒呑みにはテッパンの組み合わせ。九州流の甘い刺身醤油の風味だけでも杯が進むが、この醤油の濃厚な旨味、ときに馬刺しの味わいを邪魔しないだろうか。 「馬刺しは採算度外視、厚く切って提供します」と話すのは、2020年8月、渋谷・並木橋にオープンした「馬肉専門 走馬灯」の大将・大靏(おおつる)哲生さん。赤身と脂身のバランスがいいロースの馬刺しは、最初こそ醤油の甘味が勝るが、噛むうちに馬肉の旨味が際立つ。表面積も広いので、とろける脂の甘さも、赤身のおいしさも、舌を覆い尽くして伝わってくる。これぞ九州の甘い醤油と新鮮な馬刺しが堪能できる、理想の切り方だ。 また馬刺しと並ん...

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