迷いたくなる街、荒木町の昭和グルメ

写真:中庭愉生 文:吉田圭 編集:小松めぐみ

荒木町は迷いたくなる街だ。中央を南北に通る車力門通りから脇道を入って、石畳の路地裏に風情のあるバーを見つけたり、突如現れた階段で猫と出会ったり。次は、あの脇道に迷い込んでみようとぶらついていたら、夜風に運ばれて三味線の音が耳に届く。 江戸時代、荒木町一帯は美濃高須藩松平家の上屋敷だった。その庭園の大きな池は、明治期に入ると市民に開放され、東京有数の景勝地として人気を博したという。その後、しだいに池の周りに茶屋や料亭が集まってきて、荒木町は花街として発展していった。 そして1983(昭和58)年に料亭と待合、芸妓屋の三業組合が解散すると、かつての花街は面影を残すのみとなった。しかし、...

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