日本ワインの礎を築いた男が、自らブドウを交配してつくった赤。

日本のワインづくりがたどってきた道を振り返る時、私の脳裏にすぐに思い浮かぶ人物、それは川上善兵衛さんです。善兵衛さんは、生まれ育った郷土の農民のために生涯を捧げた人でした。ところは新潟県上越地方の高田平野のはずれ、かつて「岩の原」と呼ばれていた土地です。その名の通り岩がゴロゴロと転がっており、稲や野菜などが育たない不毛の地でした。庄屋の息子に生まれた彼は、まわりの農民たちの貧しさを目の当たりにしながら育ったのです。 7歳で父を亡くして当主となった時、善兵衛さんが考えたのが農民たちを救うことでした。ブドウだったらこの土地でも育つのではないか。それでワインをつくってみてはどうかと、ブドウ...

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