フレッド・アステアが愛した、踊り出したくなる軽やかなスタイリング

画面狭しと激しく動き回り、華麗なステップを踏んでもスーツが乱れることはない。これがフレッド・アステア流のスーツの着こなしの特徴だろう。彼はオーダーで仕立てたスーツを床や壁に叩きつけてから、あるいは使用人に着させて十分に馴染んでから着た、という有名な話がある。そんな彼がスーツの多くを仕立てさせていたのが、イギリスはロンドンのビスポークテーラー「アンダーソン&シェパード」だ。自身が書いた『フレッド・アステア自伝』(篠木直子訳、青土社)には「たいていはアンダスン&シェパードで、大騒ぎをして服を買ったものだ。見せられたものをひとつも買わないでいることは難しかった(店名は原文のまま)」と書いてい...

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