いつもそばには惚れた女──色気と暴力と裏社会とともに昭和を生きた、あるヤクザの「破天荒すぎる一生」

文:一ノ瀬 伸

作家・石原慎太郎氏による書き下ろしのノンフィクション・ノベル『あるヤクザの生涯 安藤昇伝』は、激動の戦後、裏社会で破天荒に生き、ヤクザ史に名を残した安藤昇(のぼる)の一生を活写。いま話題の一冊だ。   「映画は所詮作り事で命を張っての緊張がある訳でもなし、誰かが言っていたが男子一生の仕事と思えもしなかった。」(P132)   自身の組を解散した後、俳優としてヤクザ映画に出た際の安藤昇の気持ちがそのように記されている。読み進めてきた読者は、その言葉に妙に納得するだろう。前項までに語られる、「まるで映画の世界だ」と思わされる安藤の生き様は、安...

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