世界人権宣言からインスピレーションを得た、悲しいほど美しい異色のクラシック音楽。

文:赤坂英人

近年、欧米を中心にポスト・クラシカルと呼ばれる音楽が注目を集めている。ひと言でいえば、西洋のクラシック音楽をベースに、エレクトロニカをはじめ現代のさまざまな要素を重層化した音楽だ。このムーブメントの中心的存在であるピアニストで作曲家のマックス・リヒターが新作アルバム『ヴォイシズ』を発表した。それは1948年に国連総会で採択された「世界人権宣言」(※)にインスパイアされた作品だ。 リヒターは66年ドイツ・ハーメルン生まれ。イギリスで育ち、エディンバラ大学と英国王立音楽院でピアノと作曲を学んだ後、イタリアの現代音楽の巨匠ルチアーノ・べリオに師事。2002年にオーケストラとエレクトロニクス...

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