抗って疑問をぶつけて、「生きる」とラップする。
ミュージシャンに関するドキュメンタリーは、成功物語であることが少なくない。しかし、このたび公開される、ラッパーの 般若 を撮った 『その男、東京につき』 は違う。複雑な家族事情やいじめ体験に始まる波乱の人生をたどり2019年1月に念願の日本武道館公演を実現させるまでの経緯を本作は記録しているのだが、全編を貫くのは、彼の作風に通ずるストイックなトーン。カタルシスを伴う成功者の肖像にはならっておらず、「正直な話、成功したと思ったことは一度たりともない」と、本人もきっぱり言い切る。 「俺にとって本当の意味での成功とは、言いたいことが無くなった時に得るものだと思うんです。その日にはラップをや...
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