若手と巨匠の狭間に立ち、映像の「いま」を捉える。

文:久保玲子

やわらかい光が差し込む窓辺から「イェンイェン」と僕を呼ぶ涼やかな声。だがその声の主は、ともに描いた絵の鳥のように、突然、海の向こうの街に去ってしまった……。幼い頃、美しい母(一青窈)と離れ離れになった青年が心の傷を抱いて台湾・高雄に向かう映画 『燕 Yan』 。中国・大連出身の俳優、水間ロンを主演に、決別したい過去と向き合う旅の物語を紡ぎ監督を飾ったのは、今村圭佑。独特な光と色を操り、映像カメラマンとして2020年の日本アカデミー賞最 優秀作品賞、主演男優・女優賞を独占した映画『新聞記者』や、米津玄師のMV「Lemon」といった話題作を撮ってきた、若きクリエイターだ。 「昔から僕がい...

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