さまざまな違和感に、まっすぐ向き合って書く。

文:今泉愛子

言葉がひとり歩きすることが増えた。たとえば発言力のある誰かが「自己責任論」を唱えるとたちまち伝播し、世の中のあらゆる事柄が自己責任で片付けられるようになってしまう。武田砂鉄が2015年に上梓した『紋切型社会――言葉で固まる現代を解きほぐす』は、そんな状況を鮮やかに切り取ってみせた。24時間テレビや高校野球の演出された感動などを例に、世間にはびこる予定調和に覚える違和感を示し、多くの読者の共感を集める。政治家や人気の芸能人にも容赦ない視線を投げかける武田の言葉は、読者が感じていたモヤモヤの正体を見事に明かした。 「地位や権力をもつ人たちが発する言葉の配慮のなさってなんだろうと思っていま...

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