Vol.32 半世紀を経て一冊の写真集となった、トット・パパジョージが撮った60年代のアメリカ

 写真フィルムの現像方式を指す「ダイ・トランスファー・プリント」という言葉に馴染みのある方は、そう多くはないかもしれません。けれど、実は戦後の写真史を語る上で重要な現像方式です。特長は、染料を転写し定着させることによる濃密でクリアな発色のよさ、そして耐久性の高さが挙げられます。これまでウィリアム・エグルストンやアーヴィング・ペンといった、鮮やかな色彩表現で知られる写真家たちが軒並み採用してきましたが、複雑な工程、コスト面の懸念、公害問題などからキットが生産終了。いまは行われていませんが、撮影当時のプリントの風合いや時代感といった言葉では伝えきれない部分を保持しています。  写真家、トッ...

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