観る者を異次元の世界に誘う、『快楽の園』の謎に迫る。
20年以上前に1年間ほど、ほぼ毎週マドリッドに出張していたことがある。プラド美術館は私の庭になった。まず向かうのはヒエロニムス・ボスの『快楽の園』で、時間がなくなれば他の膨大な展示作品を観ずに帰ることもしばしばだったが、後悔は全くない。ボスとの幸せなランデブーである。 不思議なのは作品に出会うたびに、絵の大きさのイメージが異なることである。こちらの体調や気分によって印象が変わることがあっても、サイズが違って見えたのはなぜだろうか。それくらい、毎回の出会いが衝撃的だったということなのだろうか。 この映画が公開されると聞いて、ようやく世界が私に追いついたと喜んだ。いや、実は自分だけ...
続きを読む