ソ連体制下で精神の自由を問う、ラトヴィア文学のベストセラー

バルト3国のひとつであるラトヴィアは、1918年に建国を果たした。しかし第2次世界大戦後にソ連に併合され、その状態はソ連が崩壊する91年まで続いた。公用語はラトヴィア語だが、ソ連時代に移民が増え、現在もラトヴィア語を話す住民は6割ほど。残りはロシア語系住民だという。 それにもかかわらず、人口200万人弱のラトヴィア国内で、ラトヴィア語で書かれた本書が5万部を売り上げたというのだから驚きだ。おそらくソ連体制下における、市井の人の日常や心の動きを克明に描いたことが反響を呼んだのだろう。2015年の出版以来、世界10カ国語に翻訳され、このたび邦訳された。 物語は、母と娘の人生を交互に描く...

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