確固たる信頼を得て懸命に働く、大都市の食の裏方たち。
「今夜どこで何を食べるか?」が会話のすべてであり、「ゲランドとイル・ド・レ、どちらの塩が優れているか」で議論する人々の街。それがニューヨークだという。本書は、ある意味過剰に進化した大都市の、食に関わるさまざまな「人」へのインタビュー集。といっても、取材対象者はいわゆるスターシェフや経営者でなく、ほぼ無名の人々だ。フードトラックやダイナーで働く人、精肉、牡蠣の殻剥きといった専門の職人、魚介の卸し、アヒルの生産者など生産や流通に関わる人。そして彼らが食を提供する相手は、セレブから刑務所の受刑者にまでわたる。 SNSで拡散され、一夜にしてスターダムにのし上がれる街は、同時に一瞬で潰れてし...
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