イラク人小説家が綴る、 遺体を継ぎはぎした“名無しさん”の物語。

文:今泉愛子(ライター)

【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】 2003年、アメリカはイギリスとともにイラクへの攻撃を開始して首都バグダード(バグダッド)は陥落。05年になっても、連日のように自爆テロが相次いでいた。 当時のバグダードを舞台にした本書で、著者はイラクの小説家として初めてアラブ小説国際賞を受賞。30カ国で版権が取得され、国際的な文学賞の候補となるなど注目を集めている。 バグダードを舞台に描かれるのは、身近な者の突然の死に慣れることができない住民たちだ。そのひとりが古物商のハーディ。自動車爆弾により仕事上の相棒だったナーヒムを失った。 そして彼はある日、道端にゴミくずのように捨てられて...

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