北海道で生きる作家が描く、自然の中で覚醒する生存本能。
主人公の沢キミヤは、大学を中退し、家に引きこもっていた。家族は、建築会社を経営する父親がひとり。これまで母親と呼べる人は3人いたが、生みの母も、その後に来た母たちも家を出てしまった。 キミヤとはまるで性格が違う父は狩猟を趣味とし、キミヤにも狩猟免許を取得させた。当然、狩猟にも付き合わされたが、キミヤはまだ獲物を仕留めたことがない。どうしても引き金を引くのが一瞬、遅れてしまうのだ。 晩秋のある日、父はキミヤを半ば無理やり北海道へ鹿狩りに連れて行く。宿泊場所は、釧路空港からクルマを2時間ほど走らせたところにある温泉宿だ。狭い部屋で枕を並べても、猟銃を手にふたりで山へ入っても、父子の...
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