村上春樹の訳文が伝える、ゲッツが生きた時代の息遣い。

ジャズ・サックス奏者のスタン・ゲッツと言えばなんといっても『ゲッツ/ジルベルト』である。1964年に発売されたこのアルバムをきっかけに、空前のボサノバ・ブームが巻き起こったことはあまりにも有名だ。 ブラジルのシンガー&ギタリストであるジョアン・ジルベルトと作曲家のアントニオ・カルロス・ジョビン、それにゲッツによるこのアルバムからは、「イパネマの娘」の大ヒットが生まれた。ここでゲッツはくぐもったまろやかなテナー・サックスを披露しているが、この演奏こそが彼の名声を決定的にし、現在に至るまで数多くの人に記憶されている。 彼の生涯を綴った本書はデータが実に詳細であることにま...

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