独特の引力をもって綴る、強制収容された日系人の痛み。
1942年春、街のあちこちに強制退去を告げる紙が貼られた。日系人一家は、すみやかにカリフォルニア州にあった家を離れ、ユタ州の砂漠にある収容所へと向かう。その数カ月前に夫は逮捕されていた。残されたのは、妻と娘、息子の3人だ。夫から数日おきに手紙が届くが、検閲済みの文章からは、詳しい様子がわからない。 日本では、2016年に『屋根裏の仏さま』で注目された著者。長編『あのころ、天皇は神だった』は邦訳の入手が難しかったが待望の新訳が登場した。オオツカはカリフォルニア州生まれの日系アメリカ人。この物語は、祖父母一家がモデルだと思われる。 不遇な日系人一家の描写はていねいだが微妙な距離感が...
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