明るさと高潔さとに満ちた、トリスターノ流の子守歌。
バッハを得意とする演奏家にとって「ゴルトベルク変奏曲」は命題のようなもの。20世紀の天才ピアニスト、グレン・グールドは別格として、個人的にはフランチェスコ・トリスターノが2002年に発売した作品は、数多い「ゴルトベルク変奏曲」のなかでも突出していると思う。 11年、彼はバッハと現代音楽のジョン・ケージを同列で演奏した作品をリリース。バッハとケージ、異なる時代の音楽家の作品を組曲のように構成し、違和感なくスムースに演奏した才能の登場はセンセーションを巻き起こしたものである。彼の異才ぶりをもうひとつ挙げるなら、デトロイト・テクノの雄、カール・クレイグとはしばしばクラブで共演。その活動は...
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