トム・フォードの感性が貫かれた、恐ろしいほどに美しい復讐劇。
前作『シングルマン』で映画監督として唯一無二の存在を確立したトム・フォード。もはや「デザイナーの」 という注釈が不要なほど、僕のなかでは映画監督としてのイメージも定着している。その彼の第2作目となる本作、公開が楽しみで仕方なかった。 舞台はロサンゼルス。裕福な夫婦だが、精神的には満たされない日々を送る妻スーザンに、元夫から小説の校正本が送られてくる。「君との別れが着想となって小説を書いた。感想を聞かせてほしい」という手紙を添えて。 その衝撃的な内容の小説の展開、スーザンの回想、どこか空虚な現在、さまざまなシーンが織りなすレイヤーによって巧みに表出する暗喩がこの映画の大枠だ。また...
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