五感を総動員して想像する、ゴッホが見ていた世界。

これはすごい。ウィレム・デフォーがゴッホにしか見えない。あの自画像のゴッホが動いている──! しかし、当然ながら「そっくりさん」をウリにした映画ではない。リアルに感じるのは、外見だけでなく画家の「内側」がとことん追究されているからだ。 ゴッホを描くにあたってジュリアン・シュナーベル監督は『潜水服は蝶の夢を見る』に通じるアプローチをとった。すなわち主人公が見ている世界をいかに見る人に体験させ、共有させるか。そう、これは見る人が「ゴッホになる」映画なのだ。  1887年頃のパリ。ゴッホ(ウィレム・デフォー)の絵は「暗い」とまるで評価されない。そんななか南フランスへ行ったゴ...

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