仏ベストセラー作家がえぐり出す、蒸発男の曖昧な不幸。

農業食糧省の職員で高給が保証され、親から引き継いだ資産もあり、パリの一等地にあるタワーマンションで日本人女性ユズと暮らす46歳の主人公フロラン=クロード・ラブルスト。彼は随分前から、自分が幸せだと感じられなくなり、抗うつ剤を服用していた。その薬は精神に安定をもたらすセロトニンの働きをよくする一方、性欲を減退させる。 著者はフランスのベストセラー作家で、2022年にイスラム政権が誕生する設定の前作『服従』は大きな物議を醸した。本作でも、フランス社会の行き詰まりが存分に描かれる。 フランスには、ある日突然家族や友人、仕事との関わりを断つ「蒸発者」が毎年1万2千人もいるという。主人公のフ...

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