『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』が描く、分断される世界に差す一筋の光。

文:此花わか(映画ライター)

【Penが選んだ、今月の観るべき1本】 サンフランシスコで生まれ育ったアフリカ系のジミーは、子どもの頃に家族と仲良く暮らしたヴィクトリア朝様式の家が忘れられない。さまざまな肌の色の人々が訪れていたその家は、いまでは裕福な白人の老夫婦のものになってしまった。ところがある日、その家が空き家になり、ジミーは友人モントとこっそり移り住むが……。 この映画は、ジミー役を演じたジミー・フェイルズの半自伝的な物語だ。フェイルズと10代の頃に出会った監督のジョー・タルボットは、彼のパーソナルな物語を通して「ジェントリフィケーション」により「家」から追い出された人々を映し出したかったという。 ...

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